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メールマガジン2020年06月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2020年06月 Vol.137

1.人事・総務ニュース

休息時間は導入後に調整 ~勤務間インターバルで手引き~

 勤務間インターバル制度の導入は基本的に努力義務(労働時間等設定改善法)ですが、36協定の健康・福祉確保措置等として実施するという選択肢もあり、過労死防止大綱では導入率10%以上を目指しています。

 厚生労働省は、制度の普及拡大を目指し、運用・導入マニュアルを作成しました。本格導入の前に試行的運用を行い、必要に応じ修正を検討するのがポイントと述べています。

 望ましい水準として「11時間」、最低限として「9時間」など確保すべき時間を複数設定する方法も推奨しています。導入時は、9時間とし、その後の運用状況に応じて順次拡大するという対応も有効です。

 重大なクレーム処理、予算・決算・資金調達の業務等の場合には適用除外とする規定を整備しておく(除外回数の制限もルール化)などの実務的アドバイスも参考になります。


新型コロナで手当を支給 ~出勤・業務負荷の増加に対応~

 新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言が発せられましたが、休業や在宅勤務が難しい業種や職種も存在します。やむを得ない出勤等に対し、手当等を上乗せし、従業員のモチベーション維持を図る企業も増えています。

 大手小売業の㈱ライフでは、全従業員4万人に対し、3億円の原資を拠出して「緊急特別感謝金」を支給しました。正社員、契約社員のほか、パート・アルバイトも対象で、出勤日数や時間による差は設けません。

 ソフトウエアの品質保証等を行う㈱SHIFTでは、取引先オフィスへ常駐する従業員や、社内のテストセンターで業務を行う従業員等を対象に、「危険手当(1日当たり最大4000円)」を支給します。

 保育・人材・介護事業を展開するライク㈱では、本社・支社オフィス勤務の社員に1勤務当たり3000円の特別手当を新設しました。


記録の保存にも留意を ~改正労基法で通達・Q&A~

 改正労基法・労基則は令和2年3月31日に公布され、同4月1日から施行されています。厚労省では、これに合わせ施行通達(令2・4・1基発0401第27号)とQ&Aも公表しました。

 賃金請求権の消滅時効が2年から5年(当面の間は、経過措置により3年)に延長されたほか、記録の保存義務・付加金の請求期間についても同様の措置が講じられました。

 新しい時効規定が適用されるのは、「施行日(4月1日)以後に支払期日が到来する賃金請求権」に限られます。

 記録の保存に関しては、労基則の改正により、起算日の明確化が実施されました。原則は「記録の完結の日」(56条1項)ですが、「賃金の支払期日が記録の完結より遅いときは、支払期日が起算日」(追加された56条2・3項)となります。



2.職場でありがちなトラブル事情

「協調性欠如」と3週間で解雇 ~あっせんでも議論は平行線~

 Aさんは、電器メーカーの作業現場でパートタイマーとして働き始めました。契約期間は半年の約束です。

 ところが、就労開始から3週間ほど経過したある日、突然、管理課長から呼び出され、解雇を通告されました。「勤務態度不良で、職場環境を悪化させた」ことが理由です。

 会社担当者との間で押し問答が繰り返されましたが、らちが明きません。Aさんは、紛争調整委員会によるあっせんにより、解決を図ることにしました。

 しかし、あっせんの場でも、復職に固執するAさんと他の解決方法を主張する会社の間のミゾは埋まらず、議論は平行線をたどるばかりでした。

従業員の言い分

 会社側は「協調性に欠ける、上司の指示に従わない」などを解雇理由として挙げますが、まったく身に覚えのないことで、「言いがかり」としか思えません。 

 半年契約を結べて喜んでいたのに、急に会社を放り出されても経済的に困ります。まじめに勤務していた事実を認めてもらったうえで、約束の期間、就労の継続を希望します。


事業主の言い分

 Aさんは、「上司に対して反抗的な態度を取り、大声で自己の主張をわめき散らすなど、従業員にあるまじき言動を繰り返す」ので、やむを得ず解雇を通告しました。職場の秩序維持という必要上、復職という選択肢はあり得ません。

 問題がここまでこじれているので、復職以外の解決方法を提示していただければ、受け入れる用意はあります。


指導・助言の内容

 労使の主張がまっこうから対立し、復職は難しいと判断したので、金銭的な解決について、両者の意向を打診しました。

 労働者の側も、最終的には「紛争期間中の賃金を支払ってくれるなら、解雇を受入れる」という意思を示したので、双方が折り合える金額について調整を行いました。


結果

 事業主が和解金として50日分の賃金を支払うことを条件として、労働者が雇用契約の終了に合意しました。



3.連合総研「新型コロナウイルス感染症関連 緊急報告」

 新型コロナウイルスの全国的な蔓延により、企業の営業活動は大きな制限を受けています。

 連合のシンクタンクである総研が実施した調査によると、生活直撃の影響を被っているのは非正規社員(パートタイマー、アルバイト、派遣労働者)のグループです。勤務日数等の減少により、収入が減少したという回答者が、過半を占める状況です(図表1)。


 業務縮小に悩む業種は①飲食店・宿泊業、②サービス業、③教育、学習支援業、④製造業などです。①運輸業、②金融・保険業などでは逆に勤務時間等が増加しています。

 企業が講じた対策(複数回答)に関しては、1位が「マスク・消毒用品の配備」(55.0%)、2位が「有症状者(咳、発熱)への対応」(37.3%)で、テレワークは6位(18.3%)という状況です(図表2)。


4.身近な労働法の解説 ~出勤簿~

1.出勤簿とは

 タイムカードなど労働時間を記録する書類のことで、賃金台帳に記載すべき労働時間数等の基礎となる資料です。  労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有しています(厚労省『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』平29.1.20策定)。


2.作成対象

(1)対象事業場
 労基法のうち労働時間に係る規定(労基法4章)が適用される全ての事業場です。

(2)対象労働者
 全ての労働者です(高度プロフェッショナル制度対象労働者を除く)。 労基法41条に定める者およびみなし労働時間制が適用される労働者についても労働時間の把握義務があります(安衛法66条の8の3)。


3.出勤簿に記入する事項

 様式、必要記載事項の決まりはありませんが、労働時間の把握に必要な以下の情報を記入します。
・労働日ごとの始業・終業時刻
・労働日ごとの労働時間数、休憩時間数
・時間外労働・休日労働・深夜労働を行った日付と時刻・時間数


4.記入のポイント(同ガイドライン)

 ・使用者が労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、労働時間を適正に記録します。
・始業・終業時刻の確認、記録の原則的な方法は、次のように行います。
・使用者が、「自ら現認」することにより確認する
・タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の「客観的な記録を基礎」として確認し、適正に記録する
・同ガイドラインでは、上記原則によらず、やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合の措置も示されています。


5.保存期限

 出勤簿は、3年間※保存しなければなりません(労基法109条)。
※労基法109条では「5年間」ですが、附則143条において当分の間「3年間」とされています。


6.罰則

 労基法109条(記録の保存)の規定に違反した者は、30万円以下の罰金とされています(労基法120条)。 保存期間の起算日は、最後の記載がなされた日です(労基則56条第1項5号)。



5.実務に役立つQ&A

産前産後の基準日いつか ~予定日より出産日早まる~

 高齢で妊娠したため、早めに産前休業に入った人がいます。結果的に早産だったのですが、この方について出産手当金の申請をする場合、実際の出産日と予定日のどちらを基準にするのが正しいのでしょうか。


 被保険者が出産をしたときは、健保から出産手当金が支給されます(健保法102条)。

 

 対象となるのは、「出産の日(出産の日が予定日後であるときは出産の予定日)以前42日(多胎妊娠は98日)から出産後56日までの間で、労務に服さない」期間です。

 

 出産が予定より早まったときは「現実の出産日」を基準として、それ以前42日(多胎妊娠は98日)のうち「労務に服さない」期間が産前休業となり得ます。

 

 通常は、予定日を基準として休業開始日を決めます。出産日が早まっても「労務に服さない期間」の初日を、後から変更する(前倒しにする)ことは不可能です。

 しかし、法定の産前休業開始より前に、自らの判断で「労務に服さない期間」があれば(早めに自主的な産休に入っていれば)、現実の出産日からさかのぼり、産前42日(98日)の範囲内で出産手当金の支給対象となります。



6.助成金情報 ~新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金~

 令和2年2月27日から6月30日までの間に、以下の1・2の子どもの世話を保護者として行うことが必要となった労働者に対し、有給(賃金全額支給)の休暇(労働基準法上の年次有給休暇を除く)を取得させた事業主が助成金の対象になります。


新型コロナウイルス感染症に関する対応として、「臨時休業等」をした「小学校等」に通う子ども

  「臨時休業等」とは、新型コロナウイルス感染症に関する対応として、小学校等が臨時休業した場合、自治体や放課後児童クラブ、保育所等から利用を控えるよう依頼があった場合が対象となります。 「小学校等」とは、小学校、義務教育学校の前期課程、各種学校、特別支援学校等を指します。


新型コロナウイルスに感染した子ども等、小学校等を休む必要がある子ども

 【助成内容】
有給休暇を取得した対象労働者に支払った賃金相当額の10/10を支給

 【申請期間】
令和2年9月30日まで

 【その他】
有給休暇は、労基法39条の規定による年次有給休暇として与えられるものではないこと。 有給休暇は、年次有給休暇の場合と同等の賃金が支払われるものであること。助成金の支給上限は8330円ですが、それを超える場合であっても、全額を支払う必要があります。 有給休暇を取得した労働者が、申請日時点において1日以上は勤務したことのある労働者であること。

 【支給額】
以下の金額の合計額
対象労働者の日額換算賃金額(注1)×有給休暇の日数(注2)
(注1)各労働者の通常の賃金を日額換算したもの。8330円が上限
(注2)各対象労働者の合計有給休暇日数。時間単位の休暇を含む。
* 制度の詳細は厚生労働省HP等をご参照ください。



7.コラム  ~持続化給付金の申請について~

 ACROSEEDでは、日本国内に定住する個人の外国人にも多くの法務サービスを提供していますが、彼らも今回の新型コロナウイルスの影響を大きく受けています。特にフリーランサーとして働く英会話講師やITエンジニア、日本で起業した経営者などは深刻で、4月以降の収入が文字通りゼロをなっています。


 そんな彼らのために「持続化給付金」の案内を英語で出していますが、毎回ものすごい反響が得られます。そもそも外国人はこの給付金の事を知りませんし、知っていたとしとも日本語が理解できなければ申請サイトにまでアクセスすることもできません。取り急ぎ、経産省が発表した資料を英語に直して掲載していますが、翻訳サイトを活用すればそこまで手間がかかる作業でもありません。外国人の大多数が居住する関東だけでも良いので、もう少し多言語化に力を入れてもらえたらと願うばかりです。


 さて、この「持続化給付金」ですが、簡単に言ってしまえば昨年度と比較して50%以上の売上減少が見込まれた企業には最高200万円、フリーランサーを含む個人事業主には最高100万円を支給する制度です。手続き内容は非常に簡単で、新型コロナウイルスの影響で一時的に売り上げが減少した場合には多くの方に活用いただけます。一度、要件を確認してみてはいかがでしょうか。


 ただし、この給付金をめぐっては不正申請とみられる例が多く報告されています。個人で3~4社を経営している例も珍しくはなく、この場合には要件を満たせば200万円×4社=800万円となります。中には前年の売り上げを修正申告して増やし、無理やり“50%以上の売上減少”を達成させてしまうケースもあるようです。

 海外では食料を分け合うなどの自発的ボランティアがよく報道されていますが、日本ではこの今だかつてない一大事に不正受給に力を費やす人々がいると考えると悲しくなります。各自、各社、できることは限られますが、世のため人のためにすこしずつ協力すればもう少し明るい社会になるかと思いますので、少しでもできることを実行して行きたいと思います。

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