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メールマガジン2020年09月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2020年09月 Vol.140

1.人事・総務ニュース

副業で「簡便な管理モデル」 労働時間を包括して決定

 厚生労働省は、副業・兼業時の労働時間通算方法を示した「管理モデル」案を明らかにしました。

 

 労基法38条の現行解釈によると、ダブルワーカーの労働時間については「異なる事業主間(資本・取引関係なし)でも通算する」必要があるとしています。

 

 一方、改正労基法に基づく時間外の上限規制では、通算の時間外数を単月100時間未満、複数月平均80時間以内に収める必要があります。

 

 このため、管理モデルでは、本業の所定内労働と所定外労働、副業の労働時間(所定内労働+所定外労働)を考慮し、時間外が上記の法定範囲内に収まるように、事前に本業の所定外労働、副業の労働時間の「上限枠」を設定する方法を提唱しています。

 

 本・副業の事業場がそれぞれこの上限枠内で労働時間管理を行えば、相手方事業場の就労状況をリアルタイムで把握する必要がなくなります。これにより、労働時間管理に関する作業負担を大幅に軽減するのがねらいです。


パワハラで適応障害発症 「熱心な指導」の範囲超える
 

 病院の事務課長が「パワハラで適応障害を発症した」と訴えた事案で、東京地裁立川支部は、病院の運営元に慰謝料100万円の支払いを命じました。

 

 原告主張によると、上司の事務次長は毎日のように「バカ」「子ども以下」「1回精神科に行ったら」等の暴言を繰り返し、叱責は長いときには1時間に及んだといいます。

 

 病院側は、「労働者の成長を願って、熱心に助言・忠告したもので、指導の範囲内」と主張しました。厚労省のパワハラ指針でも「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる指導については、パワハラに該当しない」と述べています。

 

 しかし、裁判所は「次長は『言い訳とウソの塊り』『生きている価値がない』など、親身な相談相手としてはあり得ない言動を連ねていた」として、叱責は精神的苦痛を与える違法なものだったと判示しました。

 

 事務次長の上司である事務局長も適切な注意を怠るなど病院側の管理体制にも不備があったとして、安全配慮義務違反も認めました。


ダブルワーカーの保護強化 改正労災法が9月施行

 改正労災法(雇用保険法等の一部を改正する法律に包括)の施行日が、令和2年9月1日に定められました。

 

 主要な変更点は、ダブルワーカーの保護に関するものです。副業・兼業者の業務上災害には、①どちらか片方の事業場で事故に遭遇(ケガ等)するパターンと②両方の事業場の負荷を累計して発病(過労死等)するパターンがあります。

 

 改正後は、①どちらか単独で発生した災害も、複数事業場の賃金合計をベースに保険給付が行われます。②複数就労による傷病に関しては、新たに「複数業務要因災害」という区分を創設しました(給付内容は、単独災害に準じます)。

 

 「複数業務要因災害」」の典型例が過労死ですが、現在の認定基準(平13・12・12基発1063号)は20年近く改定されていないため、現在、医学等の専門家の意見を聴き、改定に向けた作業が進められています。

就業時間の20%で「社内副業」 新しい業務に挑戦

 KDDI㈱は、就業時間の20%を使って他部署業務を経験する「社内副業制度」をスタートさせました。「イノベーション創出につながる業務」に最長6カ月間、挑戦できます。

 「専門性を磨く場がほしい」「他部署の仕事を経験したい」といった社員の声に、応えたものです。従来は、定期異動や兼務という形でなければ、新しい業務にチャレンジできませんでした。

 社内HPで正社員1.1万人を対象に公募し、数百人がいずれかの業務をお気に入りに登録し、実際に応募した100人のうち、既に63人が副業を開始しています。

 「副業先」の上長と目標面談を実施し、達成度の評価を実施します。労働時間の配分に即し、成果全体の5分の1程度が処遇に反映される仕組みとなっています。



2.職場でありがちなトラブル事情

他県への転勤命令を拒否 嫌がらせ受けたと逆襲

 Aさんは、電気機器販売会社B社のC営業所で、営業事務員として勤務していました。

 

 営業所の業績が低迷するなか、B社は人員削減を決断しましたが、そのターゲットとなったのがAさんです。

 

 他県に所在するB社本社への転勤打診をAさんが拒否したにもかかわらず、B社は重ねて転勤の内示を発し、両者ともに引くに引けない状況に陥りました。

 

 Aさんは、転勤内示の撤回を求めて、都道府県労働局長にあっせんの申立てを行いました。その際、入社して4年半の間、度重なる嫌がらせを受けてきたので、その点についても会社を指導してほしいと主張し、会社と徹底抗戦する姿勢を示しました。

従業員の言い分

 もともとC営業所で働くことを前提に入社したもので、他県への転勤は受け入れられない旨、明確に意思表示をしましたが、会社は一顧だにしようとしません。

 

 上司であるマネージャーが「根も葉もないうわさ」を流すなど、前々から、意図的に私の居場所をなくさせようとする動きもみられました。こうした会社の不当な対応全体についても厳重注意していただくよう希望します。


事業主の言い分

 Aさんは能力的問題から外回りの営業ができず、やむなく営業事務を担当させていたもので、人員を削減するとしたら彼以外の選択肢はあり得ません。

 

 転勤拒否なら解雇もやむなしと考えています。嫌がらせの件については、社内調査でも問題となるような行為は確認されませんでした。


あっせんの内容

 Aさんに対しては、「勤務地限定の約束があったという証明ができない以上、就業規則に基づく正当な転勤命令に従わないのは、業務命令違反となる」旨を説明しました。

 

 B社の方からは、「懲戒処分は避けたいが、会社都合の退職とすることは受け入れらない」「嫌がらせについては、改めて調査したい」という回答がありました。


結果

 本人から転勤内示日の前日付けで退職願が提出され、会社は「嫌がらせに関し、再度、調査しその結果を本人に報告する」と約束しました。



3.厚生労働省「令和元年度・過労死等の労災補償状況」

 令和元年度は、「働き方改革関連法」施行の初年度にも当たります。柔軟な働き方を「自ら選択」できる仕組みが目標ですが、実現までの道のりは遠い感じです。

 

 厚生労働省発表の労災補償状況によると、過労死・精神障害の請求件数は299件増の2966件、支給決定件数は22件増の725件でした。

  

 特に精神障害に関する事案が増えていて、支給決定件数は44件(うち自殺件数も12件増)という状況です。


 働き方の選択どころか、仕事面で「逃げ場のない状況」に追い込まれ、メンタルヘルス不調を発症する人が増えているのが実情です。

 

 当然のことながら、発症者はフルタイム勤務で責任の重い正社員が主体です(支給決定件数の比率は全体の88%)。しかし、パート・アルバイトでも労災認定される人がいて、こちらは女性の比率が高くなっています(4人に3人が女性)。



4.身近な労働法の解説 ~就業規則の届出~

 常時10人以上を使用する使用者は、就業規則を作成し、労働基準監督署へ届出なければなりません(労基法89条)。今回は、その届出の手順を解説します。

1.作成・変更から届出までの一般的な手順

2.意見聴取のポイント

 意見聴取は、労働者の知らない間に、不利益に変更されないようにするためです。

 1)労働者の代表とは(事業場ごとにみます)

 ① 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合
② 労働組合がない場合や労働組合があってもその組合員数が過半数を占めていない場合には労働者の過半数を代表する者※
※②は、次のa)b)のいずれにも該当しなければなりません。労働者全員の意思に基づき選出された者をいい、使用者が一方的に指名したり、あて職として自動的に代表にしたりすることはできません。
a) 労基法41条2号に規定する管理または監督の地位にある者でないこと
b) 就業規則の作成・変更について、労働者を代表して意見書を提出する者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法により選出された者であること

 (2)意見書を作成してもらう

 ・届出時に添付します。
・意見書の様式に決まりはありません。労働局等から様式のダウンロードもできます。
・過半数代表者は、意見を記述し、署名または記名押印のあるものを事業主に提出します。
・あくまで意見であり、協議する、同意を得る、納得させることまで要求されていません。反対意見であっても、就業規則の効力に影響はありません。
・事業主は、意見に拘束されるものではありませんが、労働条件は労使対等の立場で決めるという趣旨から、できる限り尊重することが望ましいです。

 (3)その他留意点

 ・過半数代表者になろうとしたこと、過半数代表者であること、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として、労働条件について不利益に取り扱うことはできません。
・パートタイム就業規則など、パートタイム用の就業規則を作成するときは、その適用を受けるパートタイム・有期雇用労働者も交えて意見を聴くようにします。過半数代表者がパートタイム・有期雇用労働者から意見を聴き、これを踏まえて意見書を作成することが望ましいです。


3.届出のポイント

・遅滞なく届け出ます。
・「就業規則(変更)届」「就業規則(新旧対照表等)」に上記(2)の「意見書」を添付して、事業場ごとにそれぞれの所轄の労働基準監督署に就業規則を届け出ます。
・一定要件を満たせば、本社で一括して届出できる「一括届出制度」が利用できます。
・各書類は、コピー等を各1部用意することで、労基署の受付印押印後返却されます。
・郵送(要切手貼付の返信用封筒)、電子媒体・e-Govによる電子的な届出も可能です。


5.実務に役立つQ&A

どこで手続きする? 訓練給付受けてUターン

 雇用保険の教育訓練給付を利用して資格取得し、故郷にUターンして仕事を探したいと考えています。手続きは、現在の住所と故郷の住所のどちらを管轄するハローワークで行いますか。


 教育訓練給付金支給申請書は、「管轄公共職業安定所の長に提出」します(雇保法施行規則101条の2の11)。管轄公共職業安定所の長は、給付の種類に応じて定められています(同1条5項)。

 

 教育訓練給付(雇保法60条の2)については、「その者の住所または居所を管轄する公共職業安定所の長」となります。

 

 受給条件は、訓練開始日に支給要件期間(一般被保険者として雇用された期間)が3年以上(初めてのときは特例あり)あることです。その時点で被保険者でなく、原則離職後1年以内の人でも請求できます。

 現在の会社に在職のケース、職探しまたは再就職後のケースでも、「原則として住居所管轄安定所に対して、本人自ら申請」を行います(雇用保険業務取扱要領)。


6.助成金情報 働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

 勤務間インターバルとは、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の休息時間を設定する制度であり、労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図るもので、平成31年4月から、制度導入が努力義務とされています。

 時間外労働の上限規制は、1カ月間あるいは1年間における労働時間の総量規制であるため、特定の日や特定の期間に労働時間が長くなり、充分な休息が取得できない等の事態を回避できません。つまり、時間外労働の上限規制では労働者が健康な生活を送るために必要なインターバル時間を確保することが難しいという現実があります。そこで、勤務終了後から一定時間以上のインターバル時間を毎日設けるための勤務間インターバル制度が重要になります。


1.対象事業主

 労働者災害補償保険の適用を受ける中小企業の事業主で、対象事業場について、36協定を締結していること、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること等が求められます。


2.支給対象となる取組

 1 労務管理担当者に対する研修
2 労働者に対する研修、周知、啓発
3 外部専門家によるコンサルティング
4 就業規則・労使協定等の作成・変更
5 人材確保に向けた取組
6 労務管理用ソフトウェアなどの導入・更新
7 労務管理用機器などの導入・更新
8 デジタル式運行記録計などの導入・更新
9 テレワーク用通信機器などの導入・更新
10 労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新


3.成果目標

 支給対象となる取組が、一定の成果目標の達成を目指していること

4.支給額



7.今月の実務チェックポイント  ~職場で重大な業務災害が発生したとき~

1.重大な業務災害(注1)が発生したとき

 重大な業務災害等が発生した場合、発見者は、まずは落ち着いて被災労働者を救護します。このとき慌てて駆けつけ、2次災害を発生させないようくれぐれも注意します。場合によっては周囲に助けを求めて応急措置を行い、救急要請をして被災労働者を医療機関へ搬送します。救急車の到着を待っている間に、会社へ連絡して被災労働者の負傷状況、事故の状況などを説明します。応援が必要な場合は、会社に連絡した際に依頼します。また、死亡災害、重大災害、障害が残る災害、休業を要する災害の場合には、労働基準監督署や警察署に即時通報し、連絡が済んだら、後の災害調査のために災害現場を保存します。常に2次災害を発生させないよう意識して行動し、危険個所の立ち入り禁止措置や、場合によっては作業中止命令または避難命令を出す必要があります。

 業務災害については、労働基準監督署の現場検証や事情聴取への対応が必要となります。同時に、業務上過失致死傷であるため、警察の調査への立ち会いなども必要です。さらに、会社としては、再発防止策の検討と実施が必要となります。具体的には、設備や道具の改善、作業手順の見直し、安全衛生教育の実施などを行うことになります。

(注1)重大な業務災害とは

労働災害のうち、次の各号のいずれかに該当するものとする。
 一 労働者が死亡したもの
 二 労働者が負傷し、又は疾病にかかつたことにより、労働者災害補償保険法施行規則(昭和30年労働省令第22号)別表第1第1級の項から第7級の項までの身体障害欄に掲げる障害のいずれかに該当する障害が生じたもの又は生じるおそれのあるもの(労働安全衛生規則第84条第1項)。
※参考 厚労省「労働災害発生状況」における重大災害の定義は、一時に3人以上の労働者が業務上死傷またはり病した災害事故となっています。

 被災労働者の家族への連絡の際に注意すること

 被災労働者の家族へ連絡する場合には、次のことを伝えます。
① 被災労働者の負傷状況
② 搬送先の病院の場所、連絡先、交通手段
③ 付き添っている従業員の氏名
④ 会社の担当者と連絡先
 また、ショックを受けている被災労働者のご家族に配慮するために、最寄りの駅や病院の出入り口で到着を待つなどの対応も必要です。


2.労働者死傷病報告の提出

業務災害により死亡・休業者が発生した場合は、労働基準監督署へ「労働者死傷病報告」という報告書を提出しなければなりません。

 労働者死傷病報告は、被災労働者の重篤性によって2種類の様式に分類されています。

① 死亡あるいは休業が4日以上の場合
被災労働者が死亡した場合、あるいは負傷により4日以上休業する場合は、「労働者死傷病報告」(様式第23号)を遅滞なく労働基準監督署に提出します。

② 休業が1日以上4日未満の場合
休業が1日以上4日未満の場合は、「労働者死傷病報告」(様式第24号)を四半期ごとにまとめて、次の期限までに労働基準監督署に提出します。

③ 休業が1日もない場合
この場合は、「労働者死傷病報告」の提出は不要です。 労働者死傷病報告の提出が必要ない職場を目指しましょう。


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