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メールマガジン2020年10月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2020年10月 Vol.141

1.人事・総務ニュース

賃上げ率が0.18~0.31ポイント低下 ~令和2年春季交渉~

 大手企業を対象とする賃上げ集計が、2種類公表されました。いずれも「新型コロナ禍」の下で行われた交渉の厳しさを示しています。

 

 厚生労働省の「令和2年民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」は、資本金10億円以上かつ従業員1000人以上で労働組合のある企業321社を対象とするものです。

 

 平均妥結額は6286円(前年比504円減)、賃上げ率は2.00%(同0.18ポイント減)でした。賃上げ率は、平成25年の1.80%以来の低さです。

 

 一方、経団連も会員大手企業の妥結結果を公表しました。対象は、一部上場の従業員500人以上企業187社です。加重平均によるアップ率は2.12%(7096円)で、前年を0.31ポイント下回っています。


社外取締役に期待される役割 ~経産省が実務指針作成~
 

 経済産業省は、「社外取締役のあり方に関する実務指針」(社外取締役ガイドライン)を策定しました。社長・CEOに対する評価と、評価に基づく指名・再任等が、経営監督を行ううえで中核的な役割となると指摘しています。

 

 2013年に閣議決定された「日本再興戦略」では、コーポレートガバナンス(企業統治)改革を成長戦略のカギと位置付けました。それに伴い、社外取締役の選任が急速に拡大したものの、形式的導入にとどまっているケースも少なくありませんでした。

 

 ガイドラインは、上場企業を対象としたアンケートや有識者研究会での議論を踏まえて作成されました。取締役会の監督機能を働かせるためには、社外取締役が能動的に関与できる体制を整えることが不可欠です。

 

 それにより、社外取締役が取締役会での議題設定に関与したり、中長期的な経営戦略に関する議論を促したりするとともに、必要に応じて社長・CEOの交代を主導するといった役割を果たすことが望ましいとしています。


80歳まで更新可能に ~65歳後の再雇用制度~

 家電大手の㈱ノジマは、65歳の定年後、最高80歳まで継続雇用で働ける仕組みを整備しました。

 

 同社グループでは、定年を60歳から65歳に延長した際、規定上は再雇用制度が消滅していました(65歳以上は個別対応)。新制度では、原則として1年単位で契約更新し、上限を満80歳に達する月の末日までと定めています。

 

 人事総務部では、「本人が希望し、健康状態等に問題がなければ、すべて応じていきたい」と話しています。令和3年4月施行の改正高年法では、「70歳までの就業確保(対象者選定は可能)」を努力義務としますが、その内容を大きく上回る制度設計となっています。


 
障害者雇用率を引上げ ~令和3年3月に0.1%~

 障害者雇用率は、平成30年4月から、障害者雇用促進令の本則上(9条)は、民間企業で2.3%に引き上げられています。

 ただし、「当分の間(施行の日から3年を経過する日より前)」、2.2%に読み替える経過措置が設けられていました。


 厚生労働省は、3年の期限が迫る中、経過措置の廃止を検討していますが、その時期を令和3年3月1日(当初案は、1月1日)とする方向で議論の集約を図っています。


 雇用率引上げの影響を踏まえた支援強化策として、未達成となるおそれのある企業や新型コロナウイルスの影響の大きい企業等を対象として、「関係機関との連携によるチーム支援」を行う方針です。



2.職場でありがちなトラブル事情

バカンス中に出勤命令 ~拒否したら下請に転籍~

 製作所のベテラン溶接工であるAさんは、突然、下請会社への出向を命ぜられ、知らないうちに転籍させられていました。

 

 原因として考えられるのは、社員有志で出かけた旅行先での事件です。Aさんが幹事として旅行の手配をし、全員がバカンスを楽しんでいる最中に、社長から「取引先でトラブルが発生したので、至急帰ってくるように」と電話がありました。

 

 酔っていたこともあり、「こんなところまで電話してくるな」と要請を突っぱね、他の社員も誰一人、トラブル対応のため帰ろうとしませんでした。

 

 その腹いせとして移籍が講じられたと推測し、社長に抗議しましたが、「出向規定に基づく措置」と取りつく島もありません。話し合いによる解決はムリと判断したAさんは、紛争調整員会のあっせんを申請しました。

従業員の言い分

 「幹事」という立場だったのは間違いないですが、出社命令に従わなかったのは旅行に行った全員です。それなのに、私一人が実質解雇に近い移籍処分を受けたのは不当です。

 

 精神的ショックから現在も胃の不調が続いている状況で、復職が認められないのであれば、退職金の上乗せと精神的苦痛に対する補償として150万円の支払いを求めます。


事業主の言い分

 Aさんの反抗的態度は、今回の社員旅行が初めてではありません。以前も他の社員を巻き込んで騒動を起こしたことがあり、当社での雇用維持は難しいと判断しました。

 

 出向は社内規定に基づくもので、退職金を支払ったうえ、労働条件にも変わりありません。しかし、長年の勤続を評価し、50万円程度であれば金銭補償もやむなしと考えます。


あっせんの内容

 長い間の感情的確執があり、復職より金銭的解決が現実的な事案でしたが、本人の要求額と会社の提示額の開きが大きく、話し合いは難航しました。

 

 しかし、会社側に対し「移籍出向には、あらかじめ本人の同意が必要とされる」点を指摘し、和解を勧めたところ、金額的に譲歩する意向を示しました。


結果

 会社がAさんに対し、解決金として90万円を支払う和解案を、当事者双方が納得し、合意文書が締結されました。



3.厚生労働省「令和元年度・雇用均等基本調査」

 令和元年度の育児介護休業取得率は、女性が83.0%(前年度比0・8ポイント増)、男性が7.48%(同1.32ポイント増)で、「イクメン」の増加傾向が続いています。

 

 法律では、休業期間中の労働者に対する賃金の支払は義務付けられていません。しかし、優遇措置を講じる企業も一定割合、存在します。介護休業も併せて、調査結果をみてみましょう。

  

 金銭支給ありという企業は、育休が14.9%(平成28年度比0.3ポイント減)、介休が13.5%(同2.0ポイント減)という状況です。雇用保険の育児・介護休業給付ともに、制度の創設以降、給付率の引上げが続いている点も結果に影響していると考えられます。



 賃金のほか、退職金の取扱いも気になるところです。休業取得があっても、「休まなかったとみなして退職金を計算する」という企業は、育休が23.4%、介休が23.1%という割合です。




4.身近な労働法の解説 ~賃金の非常時払~

 賃金は、一定の期日を定めて支払わなければなりません(賞与や臨時の賃金等は除く。労基法24条2項)が、その特則として、労働者が請求する場合に、給与支給日前であっても支払わなければならない「非常時払」という制度があります。今回は非常時払について解説します。

1.非常時払とは

 労基法25条は、「使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。」としています。


 労働者は、賃金の支払期日前であっても、不時の出費を必要とする事情が生じた時の費用に充てるために繰上げ払いを請求できます。使用者は、労働者から非常時払の請求があった場合、支払義務が生じます。違反には罰則があります(労基法120条)。


2.非常の場合とは(労基法25条、労基法則9条)

① 労働者またはその収入によって生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、または災害をうけた場合
② 労働者またはその収入によって生計を維持する者が結婚し、または死亡した場合
③ 労働者またはその収入によって生計を維持する者がやむを得ない事由により一週間以上にわたって帰郷する場合


 「その収入によって生計を維持する者」とは、労働者が扶養義務を負っている親族のみに限らず、労働者の収入で生計を営む者であれば、親族でなく同居人であっても差し支えありませんが、親族であっても独立の生計を営む者は含まれません。


 上記①の「疾病」「災害」には、業務上の疾病や負傷のみならず、業務外のいわゆる私傷病に加えて、洪水・地震等の自然災害による災厄も含まれると解されています。


 労働者またはその家族が被災し、または居住地区が避難地域に指定される等により、住居の変更を余儀なくされる場合の費用は、「非常の場合の費用」に該当すると考えられています。

3.既往の労働とは

 すでに働いた分のことです。

 「既往」とは、通常は請求の時以前を指しますが、労働者から特に請求があれば、支払の時以前と解されています。

 労働者との特約がない限り、いまだ労務の提供のない部分についてまで支払う義務はありません(労働者の前借り制度ではありません)。


 既往の労働に対する賃金の一部を請求された場合は、請求のあった金額を支払えば足ります。


4.支払の時期・金額算定

 賃金の支払時期については、法令の定めはありませんが、非常時払ということの性質上、当然に、遅滞なく支払わなければならないと解されています。


 月給や週給で定める賃金の場合は、労基則19条に規定する方法によって日割計算して算定します。賃金の性質上締切り日前には計算が困難であるものについては、非常時払の趣旨から、緊急を必要とするため、使用者が善意に概算した金額を支払えば足りると解されています。


5.実務に役立つQ&A

傷病手当金請求いつまで ~時効消滅期間を知りたい~

 元フリーターの若年者がアルバイトで働いていますが、「前の職場で、病欠したときは、傷病手当金を受けた記憶がない」という話になりました。今からでも請求できるのかと尋ねられましたが、健保の時効はどのように定められているのでしょうか。


 傷病手当金は、「被保険者が療養のため労務不能の場合、3日の待期期間が経過した後、労務に服することができない期間、支給」されます(健保法99条)。

 

 時効については、「保険給付を受ける権利は、これらを行使できる時から2年を経過したときは消滅する」と定められています。

 

 「これらを行使できる時から」という文言は、令和2年4月1日から追加されています(改正民法の施行に合わせた措置)。

 この「2年」の起点について、通達では「請求権消滅時効の起算日は、労務不能であった(労務に服さなかった日)ごとにその翌日から」と述べています(昭和30・9・7保険発199の2号)。


6.助成金情報 ~ストレスチェック助成金~

 50人未満の小規模事業場におけるストレスチェックの実施は、努力義務となっていますが、小規模事業場において一人でもメンタルヘルス不調者が発生することはダメージが大きく経営にとっても痛手です。

 派遣労働者を含めて従業員50人未満の事業主が、ストレスチェックを実施し、また、医師からストレスチェック後の面接指導等の活動の提供を受けた場合に、費用の助成を受けられます。

 労働者一人ひとりが心身ともに健康で、各職場においてその能力をいかんなく発揮できることが事業の発展につながるといえます。


1.事業場の要件

1 労働者を雇用している法人・個人事業主であること
2 労働保険の適用事業場であること
3 常時使用する従業員が派遣労働者を含めて50人未満であること


2.対象となる取組と取組の要件

1 ストレスチェックの実施
・ストレスチェックの実施者が決まっていること。

2 ストレスチェックに係る医師の活動
・事業者が医師と契約を締結し、「ストレスチェックに係る医師による活動」の全部または一部を行わせる体制が整備されていること。
・ストレスチェックの実施および面接指導等を行う者は、自社の使用者・労働者以外の者であること。


3.助成対象

1 ストレスチェックの実施費用
2 ストレスチェックに係る医師による活動費用

4.助成金額

5.手続の流れ

1 ストレスチェックの実施についての審議(医師からの助言、労使での審議、従業員への説明・情報提供など)
2 「ストレスチェックに係る医師による活動」の契約締結
3 ストレスチェックの実施
4 ストレスチェックに係る面接指導などの実施
5 ストレスチェック助成金支給申請
6 助成金支給決定通知の受取、助成金受領



7.今月のコラム  ~「準難民」制度が新設~

 24日、出入国在留管理庁は、入管施設に長期間収容されている一部の外国人の拘留を解き、社会生活ができるようにするために新たな制度を設けると発表しました。


 また、難民とは認めないものの母国が紛争中などの理由の場合には「準難民」と認定し、「定住者」の在留資格が与えられるようです。


 この場合には当然に就労も可能になると考えられ、申請数が多いネパール、スリランカ、カンボジアなどの人々が日本社会の労働力として組み込まれていくことが予想されます。


 ヨーロッパでは難民として受け入れされたアフリカ系や中近東系の外国人が、トラック運転手やスーパーの店員など多くの職種で活躍しています。


 同様に、日本でも今後10~20年後には同じような状況になることも予想され、職業紹介の増加や人手不足の解消、経済の活性化などのプラス面がある一方、国籍によるコミュニティの分断、子供の教育問題、生活支援による政府負担の増加など、マイナス面も十分に考えられます。


 とはいえ、日本で生活する外国の方が、安定した仕事に就き、幸せな家庭を築き、日本社会に溶け込むことがトラブルを回避する一番の策になると思われます。ACROSEEDも法務ビジネスを通して社会の一隅を照らし、日本のグローバル化に貢献していきたいと思います。


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