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メールマガジン2020年12月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2020年12月 Vol.143

1.人事・総務ニュース

中小企業7割が反対 男性育休の「義務化」

 日本商工会議所の「多様な人材の活用に関する調査」によると、中小企業の7割が男性育休の「義務化」に反対しています。

 

 イクメンということばが流行しましたが、男性の育休取得率は今も8%というレベルにとどまっています。休業の取得促進のため、厚労省では、休業の取得要件緩和や分割取得の導入等の検討をスタートさせています。

 

 日商の調査では、中小企業2939社から回答を得ましたが、全体の70.9%が「反対」「どちらかというと反対」と回答しました。

 

 「運輸業」(81.5%)、「建設業」(74.6%)、介護・看護業(74.5%)など、人手不足が深刻な業界で、とくに「反対」とする割合が高くなっています。


会社が経費負担を テレワーク時の通信費等
 

 連合は、「テレワーク導入に向けた労働組合の取り組み方針」を策定しました。新型コロナウイルス禍への緊急対策として、テレワーク導入が急速に進められましたが、十分な環境対策が行われていないのが実態です。

 

 6月に実施した調査結果等を踏まえ、労組サイドとして、使用者に対し提案・要求すべき事項を示したものです。モデルとなるテレワーク就業規則(在宅勤務規定)も作成しました。

 

 導入時のパソコン・ソフト・照明・事務機器等の費用について、使用者が上限付きで補償するほか、勤務時のランニングコストとしての通信費・水道費などについても月払いの手当を付加するのが望ましいとしています。

 

 生活時間の確保のため、「つながらない権利」に対する配慮も重要と指摘し、時間外・休日・深夜のメール送付、即時に対応できなかった際の不利益取扱い等の禁止も求めました。


届出の押印・署名を廃止 ~行政手続き簡素化へ~

 政府の規制改革実施計画(令和2年7月閣議決定)で行政手続きに関する押印見直しが明記されたこと等を受け、厚労省は、労基法関連の省令様式から、押印欄を削除します。

 

 対象となるのは労基則、年少則、最賃則、事業附属寄宿舎規程などで、省令改正により、使用者・労働者双方の押印・署名を求めない規定に改めます。これを受け、電子申請時の電子署名の添付も不要となります(令和3年4月1日施行予定)。

 

 協定の当事者である過半数労組(ないときは過半数代表)の適格性については、新たにチェックボックスを設けて確認します。

 このほか、労働委員会規則に基づく不当労働行為審査の申立て、あっせん・調停申請などの手続きに関しても、押印不要とする方針です(令和3年12月施行予定)。


 
「介護労働」の現場を査察 ~残業・割増等の違反めだつ~

 北海道労働局は、介護労働者を使用する事業場を対象とする監督指導結果(令和元年)を公表しました。

 介護労働者の人材確保のためには「魅力的な職場づくり」が求められますが、実際の労働環境をみると改善すべき点が少なくないようです。


 監督指導が実施された203事業場のうち、68.0%(138事業場)で労基関連違反が指摘されました。主な違反項目は、「労働時間」97件、「割増賃金」74件、「安全衛生管理体制」49件などです。


 労働時間関係では「36協定を超える時間外労働」、割増賃金関係では「割増賃金の算定単価の誤り」等の事案が報告されています。



2.職場でありがちなトラブル事情

慰留後に退職金規定変更! ~新ルールで金額が半減~

 食品メーカーで、事務員として35年間勤務したAさんは、年齢による衰えを理由として、定年前の退職を願い出ました。

 

 ところが、会社から「後任がみつからないので、もう1年間、頑張ってほしい」と慰留を受け、退職を先延ばしにしました。

 

 その後、半年ほどたったころ、会社は退職金規定を見直し、「自己都合の場合、1~5割の範囲で減額できる」という規定を挿入しました。

 

 Aさんが、約束の退職時期を迎え、手続きを採ったところ、退職金額が予想の半分程度しかありません。このため、会社の対応に不信感を抱き、あっせんの申請を行いました。

 
従業員の言い分

 新規定では「勤務状況により最大5割まで減額できる」とされていますが、退職申出時に「あなたに抜けられると困る」と慰留を受けたわけで、評価が低いとは考えられません。

 

 会社の経営が苦しいからといって、「慰留する一方で、規定を不利益変更する」というようなやり方はいかがなものかなと思います。満額はムリでも、200万円(既に支払われた130万円に70万円の上乗せ)程度の支払いを要求します。


事業主の言い分

 退職金の金額は、改定後の規定に基づき、適正に算定した結果です。Aさんは在籍期間が長く、賃金面で他の従業員より、ずいぶんと優遇している状態でした。

 

 減額を実施しないと、定年まで勤務して退職する従業員より、退職金が高くなってしまいます。会社業績も悪化していて、要求通りの金額はとても支払えません。


あっせんの内容

 話し合いを進める中で、「会社が1年間の慰留を行った」「その後に、退職金規定に減額規定を設けた」という事実について、労使の主張に相違がない点が確認されました。  そこで、会社側の経営事情も考慮しつつ、双方で折り合える金額について解決額を提示し、和解を打診しました。

 
結果

 会社が追加で50万円を支払うことで合意し、その旨の合意文書が作成されました。



3.総務省「テレワークセキュリティに関する実態調査」

 令和2年は、テレワーク推進という意味で、長く記憶に残る1年となるでしょう。原因は、いわずと知れた新型コロナウイルス禍です。災い転じで福となすとは、このことです。

 

 総務省の調査によると、令和2年7・8月の調査時点で、テレワークの導入企業は28.9%。そのうち、22.3%(導入企業の77%)が「コロナ対策のために導入した」と回答し、導入時期は令和2年3・4月が6割を占めています。

  

 テレワークは「働き方改革」という観点からはメリット大ですが、心配なのが情報セキュリティの問題です。

 対策として「情報セキュリティポリシー(どのような情報資産を、どのような脅威から、どのように保護するか)」を定めている企業割合は3分の1にとどまります。教育・啓発活動への取組も、十分とはいえない状況です。





4.身近な労働法の解説 ~管理監督者~

 会社の多くには、いわゆる「管理職」という資格・職位が配置されています。 労基法41条では「監督若しくは管理の地位にある者」(以下、管理監督者)について、労基法の一部を適用除外としています。今回は、労基法の「管理監督者」について解説します。

1.会社の管理職

 支店長、部長、課長、店長、マネージャーなどさまざまな名称があり、管理職の範囲を課長以上とする会社もあれば、副課長、副店長、課長代理なども管理職としている会社もあります。



2.労基法の管理監督者

「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。」とされています(昭63・3・14基発第150号等)。


したがって、会社が管理職としていても、労基法の管理監督者と判断されない場合があります。 (参考)女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画における「管理職」とは、「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」とされています。



3.適用除外となる労基法の規定

 労基法の管理監督者は、労働時間、休憩、休日に関する規定の規制を超えて活動しなければならない企業経営上の必要から、労働時間、休憩、休日に関する規定の適用除外とされています。

 具体的には、法定労働時間(32条)、労働時間の特例(40条)、休憩時間(34条)、休日(35条)、時間外・休日労働の割増賃金に関する部分(33条、36条、37条)、妊産婦の労働時間(66条)等です。


 なお、年少者及び妊産婦の深夜業禁止(61条、66条3項)、割増賃金の深夜業に対する部分(37条)、年次有給休暇(39条)は、管理監督者でも適用除外とされていません。


4.労基法の管理監督者の判断

(1)労基法の労働条件は、最低基準を定めたもので、法定外労働について法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則であり、企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではありません。


(2)労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って認められる趣旨です。


(3)管理監督者の範囲を決めるに当たっては、資格(経験、能力等に基づく格付)・職位(職務の内容と権限等に応じた地位)の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目し、実態に基づき判断されます。


(4)賃金等の待遇面について、基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要があります(一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではありません)。


5.実務に役立つQ&A

55歳で前払いダメか ~若年支給停止の遺族年金~

  労災保険の遺族補償年金は、夫が55歳以上でも60歳までは支給停止となります。この場合、前払一時金も請求できないのでしょうか。


 遺族補償年金前払一時金とは、遺族補償年金の一部を先に一時金として支給するものです(労災保険法60条)。給付日数は、200日から1000日までの間で、200日きざみで請求者が決めることができます。


 前払一時金を請求できるのは、遺族補償年金を受ける権利を有する遺族です。夫や父母、祖父母は原則60歳以上の者が対象となります。


 当分の間は、55歳以上の者も含む扱いとなっていますが、60歳に達するまで年金は支給停止です(昭40法附則43条1項、3項)。


 なお、3項ではただし書きで、法60条の前払一時金の適用を妨げるものではないとしており、55歳以上であれば請求が可能です。


 遺族が55歳未満の夫のみの場合、年金の受給権は発生せず、給付基礎日額の1000日分の遺族補償一時金を受け取ることになります。


6.助成金情報 ~労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)~

 「再就職援助計画」または「求職活動支援書」の対象となった労働者を早期に雇い入れた事業主に支給される助成金です。雇い入れた後に一定の要件を満たす職業訓練を実施した場合は追加支給があります。「再就職支援コース」が離職させる事業主に対する助成金であるのに対し、こちらは雇い入れる事業主を対象としています。どちらのコースも離職を余儀なくされる労働者の早期再就職を目的としています。


1.対象労働者の主な要件

雇入れ直前の離職の際に「再就職援助計画」または「求職活動支援基本計画書」の対象者となっていたこと


2.対象となる雇入れと事業主の主な要件

① 離職日の翌日から起算して3カ月以内に一般被保険者または高年齢被保険者かつ期間の定めのない労働者として雇い入れること
② 雇入れ日から起算して6カ月を経過した日を超えて引き続き雇用していること
③ 対象労働者を、雇入れ日から起算して6カ月経過後支給決定日までの間に事業主都合で解雇していないこと
④ 対象労働者に対する賃金を支払期日までに支払っていること
⑤ 雇入れの日以前1年間において、直前に対象労働者を雇用していた事業主と資本的・経済的・組織的関連性からみて密接な関係にある事業主でないこと


3.支給額と申請手続き

支給対象労働者一人あたり支給額(1年度1事業所500人が上限)

※優遇助成:一定の成長性が認められる事業所が、地域経済活性化支援機構の再生支援等一定の要件を満たした事業所等からの離職者を雇い入れた場合は優遇助成となります。

※優遇助成の対象労働者について、雇入れから1年後の賃金上昇率が2%以上である場合、「賃金上昇区分」の金額が適用されます。


 ※第2回支給申請:第1回支給基準日の6カ月後の日の翌日以降最初の賃金支払日の翌日から2カ月以内に支給申請

4.追加支給:人材育成支援

 雇入れた対象労働者に対して、一定の要件を満たすOff-JTのみ、またはOff-JTおよびOJTを組み合わせた訓練を実施した場合は、「人材育成支援」の対象となり追加支給があります。 事前に職業訓練計画を作成し労働局の認定を受けることや、雇入れから6カ月以内に訓練を開始することの他、訓練内容や時間数などについての要件があります。



7.今月のコラム  ~外国人雇用と人権~

 先日のニュースで海外から入国した外国人労働者への14日間待機のずさんな対応が報道されていました。通常は新型コロナウイルスの影響で入国後14日間はホテル等での待機を求められていますが、その報道では3段ベッドが所狭しと並ぶ超過密状態の部屋に大人数が押し込まれていました。当然、1人が発症すれば全員が感染する可能性もあり、現在の安全な入国を少しでも推進させようとする政府の努力を揺るがす大変危険な状況でした。おそらくは世間からの非難が起きないように14日間待機は形式だけ行い、あとはすぐに働かせようとする日本の受け入れ団体が行ったのだと思います。


 この人たちは海外からわざわざコロナ禍の中を、健康の危険を冒しても日本に働きに来てくれた人たちです。そんな外国人の命を何とも思っていない、単なる使い捨ての労働力、金儲けの道具にしか考えていない、このような日本人がいることを大変恥ずかしく思います。


 現在、海外で働きたいと考える外国人の間では、日本の人気はどんどん薄れています。中東やアジア諸国と比べると賃金が安く、英語が通じない、制度が複雑、おまけに労働者に対する扱いがひどい、こんな状況ではホワイトカラーは言うまでもなく、現業系職種でも日本での外国人の働き手がどんどん減っていきます。


 このような状況を打開すべく、最近では官民を含めて様々な団体が外国人労働者への正しい扱いを求める声を上げ始めました。当然、ACROSEEDとしてもこのような動きを応援し、実際に活動に参加していきたいと考えています。日本を訪れた外国人が“日本に来れてよかった!また来たい!”と思ってくれるような社会の実現に微力ながらでも貢献していきます。

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