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メールマガジン2021年02月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2021年02月 Vol.145

1.人事・総務ニュース

傷病手当金・育休の保険料免除等を見直し ~医療保険改革で議論を整理~

 医療保険改革に向け、政府の全世代型社会保障検討会議の議論とあわせ、厚労省でも議論のとりまとめが行われています。

 

 傷病手当金の支給上限期間は1年6カ月と定められていますが、現行は途中で就労可能となり、支給が中断しても、上限は延びない規定となっています。「治療と仕事の両立」の観点から、断続的な労務不能期間を「通算」して上限を適用する形に改めます。

 

 75歳以上高齢者の窓口負担は、現役並所得者3割、それ以外1割となっていますが、「それ以外」のうち年収200万円以上は2割負担に引き上げます。

 

 育児休業期間中の保険料免除に関しては、短期取得者に関する規定を整備します。現行は休業が月をまたぐ場合のみ免除の対象としていますが、2週間以上休業も対象とします。

 

 任意継続被保険者については、「2年経過」「保険料未納付」等の法定要件に該当する場合のほか、本人の選択により任意脱退も認める規定に改正する方針です。


「口外禁止条項」は違法 ~今後の審判に影響も~
 

 労働審判の内容を口外しないという禁止条項について、長崎地方裁判所は、バス運転士の訴えを認め、同条項は違法という判断を示しました。

 

 雇止めにあったバス運転士は労働審判を申し立て、会社側が230万円の解決金を支払って、労働契約を終了するという内容で審判が確定しました。その際、「正当な理由のない限り、第三者に内容を口外しない」という条項が付されていました。

 

 しかし、バス運転手は、会社側要望により、調停案に口外禁止条項が追加された際、「裁判への協力を約束してくれた同僚には、和解成立を報告したい」と訴えるなど、明確に反対する意思を表明していました。

 

 判決文では、「将来にわたり義務を負い続けることは過大な負担を強いるもので、審判の経過を踏まえたものといえず、相当性を欠く」という判断を示しました。


 口外禁止条項の違法性に関する判断は初めてとみられ、年間500~600件ほど発生している他の審判にも影響を与える可能性があります。


リスク低減まで一律の手当 ~コロナ対策で全従業員に支給~

 新型コロナに収束の兆しがみられず、変則的な勤務体制が長期化するなか、AGC㈱は、単体の全従業員8000人に対し、3000円の手当支給を開始しました。

 

 在宅勤務によって生じる光熱費・通信費などに配慮するほか、出社して働くことによる心身の負荷に報いる趣旨で、全社員一律で毎月支給する仕組みとしました。

 

 同社では在宅勤務を推進し、本社・営業拠点では、通勤費を定期代支給から実費精算方式に切り替えるとともに、PCログを併用する労働時間管理を導入しています。

 しかし、製造や研究・開発拠点に所属する従業員は、在宅勤務への対応が難しく、感染リスクに向き合って出社せざるを得ないのが実情です。

 新設した手当は、リスクが低減するまでの時限措置とし、最大1年間の支給を予定しています。


 
労災保険率の改定見送り ~特別加入制度は拡充へ~

 労災保険率は「3年ごとの改定」を原則とし、本来、令和3年度が次の改正年度に当たっていました。

 しかし、厚生労働省は、今後3年の保険収支を試算した結果、現行の保険率を据え置くと発表しました。第1種~第3種の特別加入保険料率や建設業務で用いる労務比率に関しても、同様です。


 労災保険の業種区分については、次回の改正に合わせ、「医療業」「情報サービス業」を分離・独立させる案も示されていましたが、分離に関する検討も先送りとなりました。


 一方で、労災保険の特別加入制度に関しては、新たに「芸能従事者」「アニメーション制作従事者」「柔道整復師」を対象に追加する方針が示されています。


 令和2年3月に成立した雇用保険法等を改正する法律(労災関係では、複数事業労働者に対する保護を強化)の附帯決議では、特別加入者の範囲拡大を求めていました。



2.職場でありがちなトラブル事情

社内情報流したと犯人扱い ~退職勧奨でうつ病発症~

 A社の旅行代理店の企画課長だったBさんは、ある日、社長から呼び出され、「懲罰委員会の処分が決まるまで自宅で待機するように」と通告を受けました。

 

 話を聞くと、インターネット上に、匿名で「A社の添乗員の態度が悪い」「キャンセル料の返金が遅い」等のクレームが投稿され、その内容があまりに具体的で、社内の情報が意図的に外部に流された疑いが濃いとのことです。

 

 懲罰委員会では、情報管理が企画課長の職掌のため、一方的に犯人扱いされ、その後、何度も退職勧奨を受けました。

 

 うつ病を発症し、いったんは退職に合意したBさんですが、会社の理不尽な「仕打ち」に得心がいかず、紛争調整委員会のあっせんを求めました。

 
従業員の言い分

 会社は私のいい分を聞こうともせず、「何をやったかは自分で分かっているだろう」といって責任を取らせようとしました。

 

 恐怖のあまり、精神不調を起こし、退職届を提出してしまいましたが、これは会社都合の退職である点を確認したうえで、精神的・経済的損失の補償および謝罪を求めます。


事業主の言い分

 社外に漏れた情報は機密にアクセスできる職務の者だけが知る得る内容だったため、「情報管理者としてどう責任を取るか」と詰問したもので、犯人扱いしたつもりはありません。

 

 大混乱に陥った社内を正常化するため、積極的に協力してもらいたいと思いましたが、責任逃れに終始するだけだったので、退職勧奨に踏み切りました。謝罪に応じる意思はありませんが、補償については誠意を持って対応したいと考えています。


あっせんの内容

 会社の情報管理体制そのものに問題があり、場合によっては、もっと重大な機密が漏えいしたおそれもあります。

 

 今回の事件は、社内体制見直しの契機と捉えるべきもので、1人の従業員にすべての責任を押し付け、収束を図るのは失当と説明し、会社側の譲歩を促しました。


結果

 事業主サイドが、会社側都合による退職として扱い、解決金として120万円を支払うことで双方が合意しました。



3.連合「男性の育児等家庭的責任に関する意識調査2020」

 政府は男性の育休取得促進を重要政策課題として位置づけ、厚労省では法整備に向けた検討が進められています。

 

 中小・零細企業でも、最近では、「周囲の男性が育休を取得した」と耳にする機会が増えているようです。しかし、どちらかというと「休業を経験してみる」という点に関心が集中し、その内実はあまり重視されていない傾向があります。


 実際に育休を取得した日数について尋ねたところ、男性は「1週間以内」という回答が約半分(49.3%)を占めています。女性では「6カ月超1年以内」(47.5%)がトップなのと著しい対象を示しています。

  

 休業期間が短いのは、大多数の男性自身が「長期間の休業」を望まないから(しばらく、休業気分を味わえば、それで十分)というのも、一面の真理です。「自分が休めば、誰も代わりがいない」という自負も影響しているでしょう。

 しかし、職場の理解が得られないために、休業の申出をちゅうちょしている男性も少なくないようです。「職場で休業を取得しにくい」と回答する割合は、女性の29.2%に対し、男性は57.6%となっています。

 厚労省で行われている育介法改正論議では、「取得しやすい」環境づくりも重要な議題として挙げられています。





4.身近な労働法の解説 ~就業場所における受動喫煙防止措置の明示~

 事業主が労働者の募集や求人の申込みを行う際に「就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項」の明示義務が課されています。今回は、明示の具体例に触れます。

1.受動喫煙防止のためのガイドライン

 健康増進法では、国民の健康の向上を目的として、多数の者が利用する施設等の管理権原者等に、当該多数の者の望まない受動喫煙を防止するための措置義務を課しています。

 安衛法では、職場における労働者の安全と健康の保護を目的として、事業者に、屋内における当該労働者の受動喫煙を防止するための措置について努力義務を課しています。

これを受けて、「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」(令元・7・1 基発0701第1号)が策定されています。ガイドラインでは、組織的対策、喫煙可能な場所における作業に関する措置、各種施設における受動喫煙防止対策、受動喫煙防止対策に対する支援が示されています。



2.労働者の募集及び求人の申込み時の受動喫煙防止対策の明示

 労働者の募集を行う者に対しては、どのような受動喫煙対策を講じているかについて、募集や求人申込みの際に明示する義務があります(職安則4条の2第3項9号)。

ガイドラインでは、3.組織的対策(2)受動喫煙防止対策の組織的な進め方「カ 労働者の募集及び求人の申込み時の受動喫煙防止対策の明示」において、次のように明示内容が例示されています。


・施設の敷地内または屋内を全面禁煙としていること
・施設の敷地内または屋内を原則禁煙とし、特定屋外喫煙場所や喫煙専用室等を設けていること
・施設の屋内で喫煙が可能であること



3.職業安定法上の労働条件明示例


5.実務に役立つQ&A

通勤手当減り月変か ~残業多く月給増える~

  引越しにより、通勤手当の額が減少した従業員がいます。年度末にかけて繁忙期のため、時間外手当の増加が見込まれますが、月給の総額が増えたときには随時改定(月変)を行うのでしょうか。


 報酬のうち固定的賃金が変動し、変動月以降の3カ月間の報酬平均額と現在の標準報酬月額の間で著しい高低(2等級以上)を生じた場合、月変により健康保険料等のベースとなる標準報酬月額等級を見直します(健保法43条)。


 固定的賃金とは基本給のほか、家族手当や役付手当、通勤手当等、稼働や能率に関係なく一定額(率)が継続して支給されるものをいいます。

 時間数をカウントするのは、被保険者期間が原則の12カ月に満たないなど、基本手当の受給資格を満たさない場合です。


 一方、稼働実績等によって支給される残業手当や皆勤手当等は非固定的賃金と扱い、残業手当のみが著しく増加したとしても月変を行う必要はありません。


 変動の原因となる「固定的賃金」と変動の結果の「3カ月間の報酬の平均額」がともに増加あるいは減少したときに、月変が必要になります。通勤手当は減っても、その他非固定的賃金の変動によって報酬全体が増える場合、月変は不要です。


6.助成金情報 ~職場環境改善計画助成金(事業場コース)~

 50人以上の労働者がいる事業所において、平成27年から毎年1回の実施が義務付けられているストレスチェックは、実施後に面接指導や就業上の措置を行うことで労働者個人のメンタルヘルス不調を未然に防止することが主な目的ですが、調査結果を部や課など一定規模の集団ごとに集計および分析(「集団分析」という)し、その結果を職場環境の改善につなげることは努力義務となっています。

 この集団分析を実施しその結果をもとに職場環境の改善計画を策定し改善を実施した場合に受けられる助成金です。


事業主

1. ストレスチェック実施後の集団分析を実施していること
2. 平成29年度以降、専門家と職場環境改善指導に係る契約を締結していること
3. ストレスチェック実施後の集団分析結果や日常の職場管理などの情報をもとに、専門家からの職場環境の評価を受け、改善等の指導を受けていること
4. 専門家の指導に基づき改善計画を作成→計画に基づき改善の全部または一部実施
5. 改善の実施について専門家の確認


2.対象となる措置

1. ストレスチェック実施後の集団分析を実施していること
2. 平成29年度以降、専門家と職場環境改善指導に係る契約を締結していること
3. ストレスチェック実施後の集団分析結果や日常の職場管理などの情報をもとに、専門家からの職場環境の評価を受け、改善等の指導を受けていること
4. 専門家の指導に基づき改善計画を作成→計画に基づき改善の全部または一部実施
5. 改善の実施について専門家の確認


【助成対象と金額】
専門家の指導費用
1事業場あたり年間100,000円を上限として将来にわたり1回限り

【手続など】
ストレスチェックの実施 → 集団分析の実施 → 専門家との契約(職場環境改善計画作成指導) → 職場環境改善計画の作成 → 職場環境の改善 → 助成金支給申請 *詳細は独立行政法人労働者健康安全機構のHP等をご参照ください。



7.今月のチェックポイント  ~葬祭料または葬祭給付について~

 今回は、業務災害または通勤災害が原因となって労働者が亡くなった場合に、その遺族等に対して支給される葬祭料または葬祭給付について説明します。


葬祭料または葬祭給付とは

 業務災害または通勤災害が原因で亡くなった労働者の遺族等に対し、その被災労働者の葬祭を執り行う者に葬祭料または葬祭給付が支給されます。


 業務上の災害が原因で亡くなった場合に支給される給付を「葬祭料」といい、通勤災害が原因で亡くなった場合に支給される給付を「葬祭給付」といいます。


 葬祭料または葬祭給付の支給対象は遺族に限りません。遺族がなく、被災労働者の勤務する会社が葬祭を行った場合は、会社に対して葬祭料または葬祭給付が支給されることとなります。


 葬祭料または葬祭給付の内容

 葬祭料または葬祭給付の額は、次になります。

 ※「給付基礎日額」とは、給付額の算定の基礎となるもので、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額です。

 労働基準法の平均賃金とは

 原則として、業務上または通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日あるいは医師の診断によって疾病の発生が確定した日の直前の3カ月間に、その被災労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で除して得た1日当たりの賃金額です。

 ただし、賃金締切日が定められているときは、傷病が発生した日前の直前の賃金締切日からさかのぼる3カ月間でみます。

 また、臨時に支払われた賃金(結婚祝金など)、3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)などは計算の際の賃金総額から除外することになっています。

 葬祭料または葬祭給付の請求手続

 業務災害が原因の死亡の場合は「葬祭料請求書」(様式第16号)、通勤災害が原因の死亡の場合は「葬祭給付請求書」(様式第16号の10)を作成し、死亡診断書、死体検案書、検視調書などの被災労働者の死亡の事実・死亡年月日を証明する書類を添付して、事業場管轄の労働基準監督署に提出します。

 葬祭料または葬祭給付は、被災労働者の死亡日の翌日から起算して2年を経過すると、時効により請求権が消滅しますので、それまでに請求を行います。

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