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メールマガジン2021年04月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2021年04月 Vol.147

1.人事・総務ニュース

「カスハラ」でマニュアル作成へ ~省庁連携し対応策示す~
 

 厚労省は、「顧客からの著しい迷惑行為」に関する防止対策の推進に向け、関係省庁横断的な連携会議をスタートさせました。


 対象となるのは、カスタマーハラスメントやクレイマーハラスメント(顧客・消費者・取引先からの悪質なクレームや不当な要求)です。

 

 連携会議には、厚労省のほか、経済産業省、国土交通省、農林水産省に加え、オブザーバーとして法務省、警察庁も参加します。


 仕事上で接する顧客等には、会社の就業規則の適用がないため、効果的な対策を取るのは困難です。一方で、企業は労働契約締結に伴い、安全配慮義務が生じ、外部からの迷惑行為についても、労働者の心身の健康確保が求められます。


 会議では、職場のパワーハラスメントとの相違点を踏まえた実態調査を踏まえ、令和3年度中にマニュアルをまとめる方針です。


部下の過労死で重過失 ~取締役に賠償命令~
 

 従業員の遺族が脳出血による死亡は長時間労働が原因と訴えた事案で、東京高等裁判所は会社と取締役に2355万円の賠償金支払いを命じました。

 

 営業技術係長だった従業員は、自宅トイレ内で倒れ、搬送先の病院で死亡しました。発症1カ月前の時間外労働は85時間、2カ月前は月111時間など、残業が続く中での脳疾患死です。

 

 争点は、会社の安全配慮義務違反のほか、取締役の賠償責任です。会社法429条1項では、「役員は、重過失によって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う」と定めています。

 

 判決によると、「直属の取締役は、過労死の危険性を容易に認識できたにもかかわらず、『他の従業員に代わってもらうよう声がけする』等のほか、業務量を減らす実効性ある措置を講じていなかった」と述べ、重過失があったと認定しました。


 一方、本社常駐の社長・会長については、遠隔地にある支社の増員検討等には一定の時間が必要であったとし、賠償責任を否定しました。


9割が「労使協定」を選択 ~派遣の待遇決定方式~

 令和2年4月施行の改正派遣法では、派遣元は、「同一労働同一賃金」の確保に向け、「派遣先均等・均衡方式(派遣先の正社員に合わせる)」または「労使協定方式(協定により局長通達で定める待遇を確保)」のいずれかを選択しなければならないとしています。

 

 法律上は「均等・均衡方式」が原則で、「協定方式」は特例という位置づけです。しかし、厚労省の調査によると、協定方式の選択が87.8%と圧倒的に多く、均等・均衡方式は8.2%にとどまっています。両方式併用は4.0%でした。

 

 協定方式は、派遣先の賃金水準と関係なく、派遣労働者代表との協議で賃金水準を決定できるため、導入しやすいといわれていました。同方式の場合、派遣先が変わっても、求める能力レベルが同じなら、待遇を変更する必要がありません。


 退職金に関しては、「毎月の賃金で前払い」が52.3%でもっとも多く、「退職金制度の適用」36.4%、「中退共への加入」6.3%という状況となっています。



2.職場でありがちなトラブル事情

これ以上の退職金上乗せムリ ~リストラ対象者を説得できず~

 あっせんというと従業員側が申請するイメージですが、本件は、会社側が紛争調整委員会による解決を求めたケースです。

 

 不動産業を営むA社では、経営合理化のため、一部職種の外部委託化を決め、それに伴い、約100人の従業員が職を失うことになりました。

 

 Bさんに対しては、当初、他部署への異動を提示しましたが、拒否されたため、5カ月分の退職金上乗せという条件で、退職を勧奨しました。

 

 しかし、交渉は暗礁に乗り上げ、いたずらに4カ月が経過しました。このため、労使間での解決はムリと判断したA社が、あっせん手続きを選択したものです。

 
従業員の言い分

 会社は赤字が続くから人減らしするしかないといいますが、希望退職も募集せず、新人採用を続けている状態です。私が異動に応じなかったのは、賃金減額が条件になっているからです。

 

 退職勧奨を拒んだら、嫌がらせのように深夜に及ぶ残業を命じられました。勧奨でなく、実質的に解雇と同じ扱いなので、退職金の増額請求(12カ月分)は当然の権利です。


事業主の言い分

 退職金の5カ月分上乗せは破格の条件ですが、Aさんは、会社の説明にいっさい耳を貸さずに、「他の者を退職させるべき」と頑なな態度を取り続けています。

 

 最後の1カ月は、業務指示は出さずに、100%の休業補償を行っている状況で、会社として、取れる手段は尽くしたと思います。


あっせんの内容

 会社側には、「業務削減のため人員合理化が必要といいながら、退職に誘導するために、あえて業務多忙に追い込んだというのが事実であれば、誠意を欠く」と指摘しました。従業員に対しては、「紛争調整委員会の場では、整理解雇の要件を満たすか否かの判断はしない。仮に訴訟で主張が通っても、会社側の支払い能力にも限界がある」と歩み寄りを促しました。


結果

 「上乗せは6カ月とするが、退職日を3カ月延ばし、その間は休業補償をする」という条件で、合意が成立しました。



3.厚労省「令和2年上半期・雇用動向調査」

 新型コロナの蔓延により、「人手不足」で四苦八苦していた企業も、一転して、労働力の需給調整を検討するようになりました。

 

 厚労省の調査は、その「潮目」となった令和2年上半期の状況を示すものです。


 求人数の落込みを反映し、入職率(常用労働者に対する入職者の割合)は前年同期比で1.2ポイント低下しました。その一方、離職率は前年比0.6ポイントのマイナスで、この時点では、まだ離職者数が増加するという状況には至っていません。

  

 入職超過率(入職率から離職率を差し引いた数値)の推移をみると、平成26年の2.0ポイントがピークで、それ以降、労働力需給は徐々に緩和に向かっていました。


 今回のコロナ騒動により、令和2年上半期の段階では、入職率と離職率が拮抗する(入職超過率=0.0ポイント)状況となっています。


 下半期の結果が公表される頃には、新型コロナも「過去の記憶」となっていることを祈るばかりです。





4.身近な労働法の解説 ~雇入れ時安全衛生教育~

 4月は新入社員を迎え入れ、人事異動も多い時期です。今回は、雇入れ時に事業者が行う安全衛生教育について解説します。

1.雇入れ時の教育

 「事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。」とされています(安衛法59条1項)。

雇入れ時のほか、労働者の作業内容を変更したときは、作業内容変更時教育として雇入れ時と同内容の安全衛生教育を実施します(同条2項)。


 その他、危険または有害な業務等一定の業務に労働者をつかせるときは、当該業務に関する安全または衛生のための特別の教育(特別教育)を行わなければならないとされています(同条3項)。


 新入社員研修や配属時研修に含めて実施すると良いでしょう。



2.教育の内容

 労働者を雇い入れたときは、遅滞なく、次の事項について、教育を行わなければならないことになっています(安衛則35条1項)。


(1)機械等、原材料等の危険性または有害性およびこれらの取扱い方法に関すること。
(2)安全装置、有害物抑制装置または保護具の性能およびこれらの取扱い方法に関すること。
(3)作業手順に関すること。
(4)作業開始時の点検に関すること。
(5)当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因および予防に関すること。
(6)整理、整頓(とん)および清潔の保持に関すること。
(7)事故時等における応急措置および退避に関すること。
(8)前(1)から(7)に掲げるもののほか、当該業務に関する安全または衛生のために必要な事項


 特定の機械や有害物質などの取扱いがないサービス業、社会福祉施設、飲食店や、オフィスワークが中心の業種などについては、(1)から(4)は省略可能です。


 上記に掲げる事項の全部または一部に関し十分な知識および技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができます(同条2項)。



3.留意事項

・パートタイマーおよびアルバイトなど、短時間労働者に対しても教育の実施が必要です。
・雇入れ時の教育時間について法令上の規定はありませんが、事業者は労働者が従事する業務を考慮して十分な安全衛生教育を行うことが必要です。
・事業者の責任において実施されなければならないものですので、安全衛生教育については所定労働時間内に行うのを原則とされています。また、安全衛生教育の実施に要する時間は労働時間と解されますので、当該教育が法定時間外に行なわれた場合には、当然割増賃金が支払われなければならないとされています(昭47・9・18基発602号)。
・特別教育を行ったときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを3年間保存しておかなければならないとされています(安衛則38条)。
・派遣労働者については、雇入れ時・作業内容変更時(派遣時)の安全衛生教育は派遣元に、危険有害業務に従事しうるものに対する特別教育は派遣先に実施義務があります。



5.実務に役立つQ&A

60歳から夫に転給? ~遺族年金の停止解除~

  女性従業員が、通勤中の交通事故で亡くなりました。遺族は夫と女性の父親ですが、夫は60歳未満のため、労災保険の遺族年金は支給停止の状態です。60歳に達すれば転給されるのでしょうか。


 遺族年金の受給資格者となるのは、被災労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹です。給付の受給権があるのは、このうち最先順位者です(労災保険法16条の2第1項)。


 受給順位は、本来、夫の方が亡くなった女性の父よりも上位ですが、妻の死亡当時、夫が55歳以上60歳未満のときは、支給停止の状態となり、受給順位も父の方が上になります(法附則43条3項)。


 父の遺族年金の受給権は、死亡など法16条の4で定める事項によって消滅します。夫が60歳に到達したからといって、父の受給権が消滅するわけではありません。


 なお、遺族年金は遺族の数によって額が異なっています。夫の支給停止が解除されれば、年金は給付基礎日額153日分から201日分にアップします。



6.助成金情報 ~中途採用等支援助成金(UIJターンコース)~

 東京圏から地方への移住者を採用するための経費の一部が助成されます。地方公共団体が行う地方創生移住支援事業における「移住支援金」の対象となった求人であることと、その求人に応募して移住支援金を受給した労働者を一人以上雇入れることが必要です。


対象となる労働者とは

・東京圏からの移住者で、移住支援金の受給者であること(新規学卒者は除く)
・地方公共団体が開設運営するマッチングサイトに、地方創生移住支援事業における移住支援金の対象事業として掲載された当該事業主の求人に応募していること
・雇用保険の一般または高年齢被保険者として雇い入れられること
・継続して雇用する労働者(原則65歳まで継続雇用しかつ継続して1年以上雇用)として雇い入れられること



2.地方創生移住支援事業とは

東京23区(在住者または通勤者)から東京圏外へ移住し、移住支援事業を実施する都道府県が選定した中小企業等に就業した人または起業支援金の交付を受けた人に、都道府県・市町村が共同で交付金を支給する事業
※東京圏 :東京都 埼玉県 千葉県 神奈川県
※東京圏外:東京圏内の条件不利地域を含む
※通勤者 :移住直前の10年間で通算5年以上東京圏に在住し東京23区に通勤していた人(ただし直近1年以上は東京23区に通勤していること)


3.対象となる事業主

・雇用保険適用事業主であること等共通要件を満たしていること
・地方公共団体の移住支援事業・マッチング支援事業へ登録し、採用計画書を管轄労働局に提出していること
・採用計画期間内に対象労働者を1人以上雇い入れており6カ月以上継続雇用していること
など

4.助成金の概要

助成金の対象:労働者の採用活動に要した次の経費
・募集・採用パンフレットの作成・印刷の経費
・自社ホームページの作成/改修の経費
・就職説明会・面接会・出張面接等の実施経費
・外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士、民間有料職業紹介事業者等)によるコンサルティング費用


※詳細は厚生労働省HP等をご参照ください。



7.今月のコラム  ~アジア系差別と外国人採用~

 新型コロナウイルスの蔓延に伴い、アメリカを中心にアジア系への差別が増加しています。もちろんアジア系といっても中国人、日本人、韓国人、シンガポール、香港、タイ…実に様々な国の人が含まれるわけですが、今回の差別はアジア人っぽく見える人ならその全員が対象となっています。また、主に狙われるのは弱い女性や高齢者などに集中しており、実行犯は明確な考えもなく弱いものを叩き、単にその憂さ晴らしをしているのではないかと思えます。当然、このような行為は許されることではありませんが、私たち日本人に置き換えてみたらどうでしょうか。


 数か月前にベトナム人が豚などの家畜や果物などを盗んだ事件がありましたが、あの時の報道の姿勢はどうだったでしょうか。日本人でも密漁などで検挙される例はたくさんありますが、あたかもベトナム人は犯罪や問題を起こすという内容の報道が蔓延しており、たしかニュース報道のあと、全く関係のない在日ベトナム人団体が謝罪をして「ベトナム人全員がそうではない」といったコメントを出していたと思います。また、中にはベトナム人の女性が知らない日本人から突然「日本から出ていけ!」と誹謗中傷を受けた報道もなされていました。アメリカでのアジア人差別と比べると規模や犯罪の程度などの差はありますが、本質的には同じ事が起きていたのではないかと思います。


 差別的、ステレオタイプ的な考えは多かれ少なかれどこの国に行っても誰にでもあるものですが、今後、グローバル社会を迎える日本では当然ながら1人1人がこのような考えに気を付けていかなければなりません。特に誰かが言った事や報道された事をうのみにするのではなく、一度は自分の頭で考えて整理し自分なりの意見を持つことが重用であり、できれば実際にその人々とコミュニケーションをとって中身を知ろうとする努力が必要かと思います。また、今回のアジア人差別では日本人も被害にあった訳ですから、せめて日本社会では同じ思いをする外国人がでないように私たち1人1人が自覚することが重要です。


 外国人雇用の面でいえば、採用における国籍、性別、信条、出身地、宗教などでの決めつけをなくし、本当にその人の能力や考え方などの中身で判断していきたいものです。現在、ACROSEEDでも求人を出しており、大企業では当たり前かもしれませんが、顔写真の添付や性別の記載をなくすようにし、やり取りはすべてメールに統一しました。正直、会ってみるまでどんな人なのか全くわからないのですが(女性だと思っていたら男性だったり、中国系の人だと思っていたらカナダ人だったり…)、その反面、「本当に職務に必要な能力とは何か、その能力を持っている人物かどうか」この一点に集中することができるようになりました。採用すべき人とそうでない人の区別が明確になり、以前のような採用のブレが飛躍的に少なくなりました。


 日本の中小企業でもこのような採用方法が普及していけば、多様な能力を持った人材が活躍できる場が増え、働き方のグローバル化も進むと思われます。うわべだけの表面ではなく、その人の中身で判断する採用が大企業から個人経営にまで広がることを願っています。


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