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メールマガジン2021年07月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2021年07月 Vol.150

1.人事・総務ニュース

総合職で22万円超え ~令和4年大卒初任給~
 

 インターネット上の求人情報を対象として労働新聞社が実施した調査によると、令和4年3月卒業見込みの大卒初任給は、総合職の平均が初めて22万円を超えた(22万826円)ほか、他の職種も上昇傾向を示しました。


 総合職(主として首都圏勤務の全国転勤型。事務・企画・営業系)の集計企業のうち、23%が水準を引き上げ、残りの77%が据置きを選択しています。

 

 技術系は22万3281円で、特に高齢化・人材不足に直面している建設業では、全体の3割強が初任給を増額しました。


 このほか、一般職(事務系)は19万1160円、営業職は23万3822円という結果でした。前年調査と比べると伸び幅はほぼ半減していますが、大卒初任給に対する経済停滞の影響は限定的となっています。



国家公務員の定年65歳へ ~賃金は60歳前70%に設定~
 

 通常国会で、国家公務員の定年の段階的引上げが決まりました。国家公務員法の改正案上程は前年に続き2度目です。前回は検察幹部の特例規定に対する批判により廃案となりましたが、今回は特例部分がカットされています。

 

 令和5年度から2年ごとに1歳ずつ引き上げ、13年度に65歳とします。現在、民間企業に対しては「希望者全員65歳まで継続雇用(60歳定年で継続雇用による場合等も可)」が義務付けられていますが、65歳定年は公務員が民間をリードする形になります。

 

 60歳以降の賃金は当分の間、60歳以前の70%に設定、同時に管理監督職は60歳までとする役職定年制を設けます。13年度までには、給与全体を見直し、賃金カーブを緩やかにする方向で、検討を進めるとしています。

 

 民間企業の定年引上げに関しては、賃金体系がネックとなっています。段階的引上げの間に、人事院がどのような制度設計を提示するのか注目されるところです。


 なお、今国会では、改正育介法、改正健保法も成立しました。


雇保料率の引上げを ~財務省審議会が意見~

 雇用保険料率は平成29年度以降、5年連続で1000分の9という低水準で据え置かれています。一方、新型コロナウイルスによる失業防止のため雇用調整助成金の支出が3兆円を超えるなど、財政状況がひっ迫しています。

 

 財務省の財政制度等審議会は、この問題について「まずは保険料引上げによる対応が検討されるべき」という意見を表明しました。

 

 現在の雇用保険料率は本則ではなく、附則により「時限的」に引き下げられています。附則の期限(令和2年度に一度延長)は令和3年度末までとなっているので、令和4年度以降の対応は、今年度末に労働政策審議会で議論する方針です。


 ただし、雇用保険財政の悪化は、上記とは別に国庫負担を軽減する特例(平成19年度から実施)によるという指摘もあり、議論は曲折が予想されます。



2.職場でありがちなトラブル事情

職務に専念せずと解雇 ~セクハラを上司に相談しただけ~

 被害者は、会計事務所に勤務していたAさんです。事務所の社長さんは、何か事あるごとにAさんにプレゼントを贈りますが、指輪やカバンなど高価な品ばかりです。お断りしても、納得してくれる相手ではありません。

 

 そのうちに、夜間に自宅に電話をかけ、細かに行動の報告を求めるようになりました。送られてくるメールの量は業務連絡の域をはるかに超えています。

 

 思い余ったAさんが上司である部長に相談をしたところ、社長はその内容を盗聴したうえで、部長ともども解雇を通告しました。撤回を求めて争いましたが、らちが明かないために都道府県労働局の紛争調整委員会にあっせんの申請をしました。

 
従業員の言い分

 社長は、こちらの気持ちをまったく考えず、好意の押し付けを繰り返しますが、これはセクハラというか、ストーカー行為です。

 

 今も精神と体調の不調が続いている状態です。事務所に戻るつもりはなく、謝罪文と苦痛に対する慰謝料の支払を要求します。


事業主の言い分

 本人は話をセクハラにすり替えていますが、私が問題にするのは、その勤務態度です。就業時間中に上司と会議室で話し込み、会社の悪口を言い連ねたのですから、職務専念義務違反として処分を受けるのは当然でしょう。

 

 私の言動に、誤解を招く点があったのは認めます。慰謝料については、給料の2~3カ月分の50万円程度が限度と考えます。


あっせんの内容

 セクハラまがいの行為があった点については、労使間で争いがなく、復職という方向で話がまとまりそうなので、慰謝料の金額について両者に歩み寄りを求めました。

 復職までの期間を休職扱いとし、その間の補償分に慰謝料を上乗せし、総額で200万円を支払うということで調整を図りました。


結果

 Aさんが1カ月後に復職し、事務所が200万円の慰謝料(休業補償・治療費を含む)を支払うということで、両者ともにあっせん案を受諾しました。



3.厚生労働省「小規模事業所毎月勤労統計調査」

 景気の波に大きく翻弄されるのは、小規模・零細企業の宿命です。

 

 厚労省が実施した「小規模事業所毎月勤労統計調査」から、その実態を垣間見ることができます。調査対象となったのは、従業員規模1~4人の小規模事業所(20000事業所)です。


 令和元年10月1日から令和2年9月30日までの1年間(その後半に、新型コロナウイルス禍の洗礼を受けました)に支払われたボーナス額(特別に支払われた現金給与額)は、前年比6.7%減少しました。


 なかでも、深刻な影響を受けたのが製造業で、前年に比べ、2割(19.3%)もダウンしています。



 新型コロナウイルスというと「休業」の増加というイメージですが、令和2年9月(給与締切日がある場合には、その日を最終日とした1カ月)の出勤状況をみてみましょう。


 調査産業計の出勤日数は19.3日で、前年比0.6日減という状況です。テレワーク等は出勤にカウントされるので、こちらの下げ幅はそれほど大きくありません。男性(0.7日減)より女性(0.4日減)の休業が少ないのは、テレワーク向きの職種が多いせいでしょうか。






4.身近な労働法の解説 ~専門業務型裁量労働制②~

 前回に引き続き、労基法に定める「専門業務型裁量労働制」の対象19業務のうち、4業務について記載します(番号は前回・次回に引き続きます)。


④衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務


・「広告」には、商品のパッケージ、ディスプレイ等広く宣伝を目的としたものも含まれるものであること。
・考案されたデザインに基づき、単に図面の作成、製品の制作等の業務を行う者は含まれないものであること。


⑤ 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサーまたはディレクターの業務


・「放送番組、映画等の制作」には、ビデオ、レコード、音楽テープ等の制作および演劇、コンサート、ショー等の興行等が含まれるものであること。


・「プロデューサーの業務」とは、制作全般について責任を持ち、企画の決定、対外折衝、スタッフの選定、予算の管理等を総括して行うことをいうものであること。


・「ディレクターの業務」とは、スタッフを統率し、指揮し、現場の制作作業の統括を行うことをいうものであること。


⑥ 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務


・いわゆるコピーライターの業務をいうものであること。


・「広告、宣伝等」には、商品等の内容、特長等に係る文章伝達の媒体一般が含まれるものであり、また、営利目的か否かを問わず、啓蒙、啓発のための文章も含まれるものであること。


・「商品等」とは、単に商行為たる売買の目的物たる物品にとどまるものではなく、動産であるか不動産であるか、また、有体物であるか無体物であるかを問わないものであること。


・「内容、特長等」には、キャッチフレーズ(おおむね10文字前後で読み手を引きつける魅力的な言葉)、ボディコピー(より詳しい商品内容等の説明)、スローガン(企業の考え方や姿勢を分かりやすく表現したもの)等が含まれるものであること。


・「文章」については、その長短を問わないものであること。


⑦ 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握またはそれを活用するための方法に関する考案もしくは助言の業務


・いわゆるシステムコンサルタントの業務をいうものであること。


・「情報処理システムを活用するための問題点の把握」とは、現行の情報処理システムまたは業務遂行体制についてヒアリング等を行い、新しい情報処理システムの導入または現行情報処理システムの改善に関し、情報処理システムを効率的、有効に活用するための方法について問題点の把握を行うことをいうものであること。


・「それを活用するための方法に関する考案もしくは助言」とは、情報処理システムの開発に必要な時間、費用等を考慮した上で、新しい情報処理システムの導入や現行の情報処理システムの改善に関しシステムを効率的、有効に活用するための方法を考案し、助言(専ら時間配分を顧客の都合に合わせざるを得ない相談業務は含まない)することをいうものであること。


・アプリケーションの設計または開発の業務、データベース設計または構築の業務は含まれないものであり、当該業務は則第24条の2の2第2号の業務に含まれるものであること。




5.実務に役立つQ&A

老齢年金どう扱う ~繰下げ中に死亡した場合~

  当社役員(60歳台後半)が、治療の甲斐なく、病気でお亡くなりになりました。遺族のお話では、「働いているからと老齢年金の裁定請求をせず、繰下げをしていた」ということです。老齢年金の扱いはどうなるのでしょうか。


 厚年法44条の3第4項では、老齢厚生年金の支給繰下げをした際に支給額を加算するとしています。


 具体的な加算額は、受給権発生時の年金額に、受給権を取得した月から繰下げ申出をした日の属する月の前月までの月数(上限60カ月、令和4年4月からは120カ月)に1000分の7を乗じて算出した増額率を乗じて計算します(令3条の5の2)。


 死亡者に代わって遺族が繰下げ請求はできず、未支給請求が可能な場合は、65歳の本来請求で年金決定されたうえで未支給年金として支払われます。つまり、増額のない年金を65歳までさかのぼって計算し、受給した扱いとなります。


 なお、被保険者が高収入の場合、在職老齢による調整の対象になり得る点に留意が求められます。



6.助成金情報 ~新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇制度導入助成金~

 新型コロナウイルス感染症に関する心理的なストレスが母体または胎児の健康保持に影響があるとして、医師または助産師から指導を受けた女性労働者に対して、母性健康管理措置として有給の休暇制度を新たに整備し、実際に休暇を与えた事業主に対して助成されます。


助成内容

1事業場につき1回限り15万円(労災保険適用事業場を支給単位とする)


対象となる有給休暇制度とは

・新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として、医師または助産師の指導により休業が必要とされた妊娠中の女性労働者が取得できる有給の休暇制度
・年次有給休暇とは別に与えられ、年次有給休暇の賃金相当額の6割以上が支払われるもの
・既存の特別休暇の対象に新たに加える形でもよい


対象となる労働者

・新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として、医師または助産師の指導により休業が必要とされた妊娠中の女性労働者で、当該有給休暇を取得した日の前日までに1日以上勤務したことがあるもの


・雇用保険被保険者でなくてもよい(雇用関係を確認できないものや法人の取締役および合名会社等の社員、監査役、協同組合等の社団または財団の役員等は除く)


支給対象となる事業主

・令和4年1月31日までに、上記有給休暇制度を整備する措置を行い、当該制度をすべての労働者が知ることができるよう適切な方法で周知した。


・対象労働者に対して、令和3年4月1日から令和4年1月31日までの間に当該休暇を合計して5日以上取得させた。


・対象となる事業場において、「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金(令和2年度)」、「両立支援等助成金新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース(令和2年度)」を受給していない。


併給について

・対象労働者が雇用保険被保険者であった場合、同一対象労働者の同一期間の休暇について令和3年度の「両立支援等助成金(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース)」の要件も満たす場合は、併給することが可能です。


(「休暇制度導入助成金」との主な支給要件の違い)
・対象労働者が雇用保険被保険者であること
・令和2年5月7日から令和4年1月31日までの間に、対象労働者に当該有給休暇を20日以上取得させていること など


(「休暇取得支援コース」の助成内容)
対象労働者一人につき、28.5万円(雇用保険適用事業所ごとに令和3年4月1日から令和4年1月31日までの間において5人まで)



7.今月のコラム  ~外国人支援が企業価値にも影響~

 6月23日の日経に「外国人支援、企業価値に 地方や上場企業、取り組み拡大 政策後押し、スピード欠く」との記事が出ていました。「技術・人文知識・国際業務」などの事務系、高度専門職などはもちろん、現業系の「技能実習」や「特定技能」などを雇用する企業の外国籍社員に対する取り組みや支援が企業の価値の1つとして認められつつあるということでした。今後はホワイト企業というイメージの中に、外国人社員のサポートも含んで考えられるようになるかもしれません。


 従来、特に現業系を中心に「従業員」というよりも安価で一時的な「労働力」として捉えられていた感がありましたが、難民の収用問題などが最近のニュースで取り上げられることにより日本に滞在する外国人の人権意識が高まり、このような風潮を生み出したと思われます。


 正直、この時代になってやっとこのような取り組みが評価されるというのは、「日本は世界の先進国の中でも本当に遅れているのだな」と実感しました。一部の会社ではありますが外国人差別を平然と行うようなケースが後を絶たないのも、妙に納得してしまいました。


 とはいえ、社会全体が前向きな第一歩を踏み出したことには違いなく、このうねりを止めることなく加速させていくことが重要だと捉えています。ACROSEEDにできることは微々たるものかもしれませんが、まずはセミナー講師として口頭でお客様に伝え、法務サービスを通して外国人社員のサポートを行い、お客様の企業価値を高めるパートナーとして努力を積み重ねていきます。


 国の制度などはまだまだ具体的ではなく情報が二転三転すると思われますが、このレポートをお読みの皆さまに最新情報をお届けしていきますのでご期待ください。


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