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メールマガジン2021年08月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2021年08月 Vol.151

1.人事・総務ニュース

ワクチン職域接種で手引き ~本人の意思確認を~
 

 新型コロナウイルスの予防に向け、職域接種がスタートしています(現在は、新規受付一時休止)。厚労省は円滑な推進のため、「職域接種向け手引き」(現在は第2版)を公開しました。


 実施に際しては、市町村と委託契約を結んだ医療機関が企業・職域単位でワクチン接種を行います。形態としては、①企業内診療所が実施、➁外部医療機関が企業に出張、③非接種者が外部医療機関に出向く、の3とおりがあります。

 

 同一会場で2回の接種を済ませることを基本とし、実施企業は、医療機関の確保、申請入力・連絡調整、会場の手配、自治体等との連絡を担う事務局体制を確保することが条件となります。


 手引では、正規・非正規等の雇用形態により一律に対象者を区別することは望ましくなく、「接種を受けるかどうかは自ら決定する」という考え方に基づき、強制は避けるように留意を求めました。



5割超の退職金減額は無効 ~「接待漬け」で諭旨解雇~
 

 クラブ接待を繰り返し受けた等として諭旨解雇された元従業員が、退職金の減額は無効と訴えた事件で、東京地方裁判所は「5割を超える減額は無効」と判示しました。

 

 元従業員は、不動産サブリース専門会社の支店勤務で、管理建物の修繕工事等の発注に関する業務上の権限を有していました。

 

 その権限を行使して、業務の受注先を元部下が経営する会社に変更した後、繰り返し高額なクラブで接待を受けました。さらに、元部下に対して、クラブで働く外国人ホステスの在職証明書偽造も頼んでいました。

 

 内部調査で不正が発覚し、会社は諭旨退職処分としましたが、退職金規定に基づき、退職金は全額が不支給となりました。


 裁判所は、元従業員の「元部下からの接待は、個人的関係によるもの」という主張は退けましたが、退職金の減額のうち5割を超える部分は無効という判断を示しました。


 接待金額が非常に高額とはいえず、偽造証明書も実際に使用されなかった点を踏まえ、「過去の勤続の功をすべて抹消するまでの背信行為といえない」と述べています。


高齢者の職場改善で助成金 ~令和3年度受付は10月末まで~

 令和3年度の「エイジフレンドリー補助金」の支給申請受付が始まりました。受付期間は令和3年10月末までです。

 

 エイジフレンドリーとは「高齢者の特性を考慮した」という意味で、高年齢労働者の労働災害を防止するため、エイジフレンドリーを重視した防災対策が求められています。

 

 対象となるのは、高年齢労働者(60歳以上)を1人以上雇用している中小企業です。「身体機能低下を補う設備・装置の導入」、「高齢者の健康・体力の把握」「高齢者の特性に配慮した安全衛生教育」等に要した経費の2分の1が補助されます(上限100万円)。


 サービス業では顧客と密に接する機会が少なくありませんが、新型コロナウイルス感染を防⽌するための設備・作業の改善も助成対象とされています。


 問合せ・申請先は、一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会「エイジフリー補助金事務センター」です。



2.職場でありがちなトラブル事情

退職期日をズルズル引き伸ばし ~後任者みつからずと~

 被化粧品販売会社A社に勤務していたBさんは、実家の父親が倒れたため、退職を決意しました。

 

 会社側も届出を受理し、さっそく後任者の募集を開始しました。しかし、急な話でもあり、なかなか条件に合致する応募者が現れません。

 

 このため、Bさんの上司は「後任者がみつかるまでは退職を認めない」と態度を一変させました。

 

 実家から矢の催促を受けているBさんは、進退に窮し、都道府県労働局長の助言・指導を求めました。

従業員の言い分

 周囲に迷惑がかからないように、退職日は1カ月半先の日を指定しました。家業の手伝いを考えると、これがギリギリ一杯の期限です。。

 

 しかし、副社長は「引継ぎもしないで退職するなんて、社会人として考えられない」などと、私の方に非があるかのようないい方をします。何とか円満に解決できるように、会社を指導していただきたいと思います。


事業主の言い分

 事情は本人から聞きましたが、退職届を受理する際に、「キチンと後任者に引き継ぎを行うことが条件」とクギを刺してあったはずです。

 

 次の担当者の採用が済んでない以上、届出に記載してある日付での退職を認めることは、会社業務の必要性からも、認めることはできません。


指導・助言の内容

 Bさんは退職予定日の1カ月以上前に届出を提出し、受理されているので、民法上の問題はなく、家業の手伝いという理由もやむを得ないものと認められます。


 会社側の「後任者が決まらない」という事情は、退職を慰留する理由にならないと説明し、希望どおりの退職日とするよう助言しました。


結果

 A社が都道府県労働局長の助言を受け入れ、「予定どおりの退職日で、ただちに雇用保険の離職票など退職手続きを済ませる」ということで、円満解決しました。



3.内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における中小企業の経営意識調査」

 新型コロナ関連の支援策に関しては、「情報収集が不十分で、完全に利用しきれていない」という中小企業担当者も少なくありません。

 

 助成金のなかで、知名度ナンバーワンなのは雇用調整助成金です。内閣府が中小企業を対象に実施した調査によると、31%が既に支給を受けています。国・自治体から時短要請があった企業に限ると、その割合は61%に達します。


 一方、働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)やトライアル雇用助成金は、利用率が2%にとどまっています。




 申請しない理由については、雇用調整助成金の場合、「休業させていない」「売上げ減等の支給要件を満たさない」という企業(そもそも受給不能)が6割を占めます。


 これに対し、働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)などは、「聞いたことがあるが利用する気がない」「知らない」が9割近くに達する状況で、アピール不足の感は否めません。






4.身近な労働法の解説 ~専門業務型裁量労働制③~

 前回、前々回に引き続き、労基法に定める「専門業務型裁量労働制」の対象19業務のうち、12業務について解説します(番号は前回に引き続きます)。


⑧ 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現または助言の業務


・いわゆるインテリアコーディーネーターの業務をいうものであること。


・「照明器具、家具等」には、照明器具、家具の他、建具、建装品(ブラインド、びょうぶ、額縁等)、じゅうたん、カーテン等繊維製品等が含まれるものであること。


・「配置に関する考案、表現または助言の業務」とは、顧客の要望を踏まえたインテリアをイメージし、照明器具、家具等の選定またはその具体的な配置を考案した上で、顧客に対してインテリアに関する助言を行う業務、提案書を作成する業務、模型を作製する業務または家具等の配置の際の立会いの業務をいうものであること。


・内装等の施工など建設業務、専ら図面や提案書等の清書を行う業務、専ら模型の作製等を行う業務、家具販売店等における一定の時間帯を設定して行う相談業務は含まれないものであること。



⑨ ゲーム用ソフトウェアの創作の業務


・「ゲーム用ソフトウェア」には、家庭用テレビゲーム用ソフトウェア、液晶表示装置を使用した携帯ゲーム用ソフトウェア、ゲームセンター等に設置される業務用テレビゲーム用ソフトウェア、パーソナルコンピュータゲーム用ソフトウェア等が含まれるものであること。


・「創作」には、シナリオ作成(全体構想)、映像制作、音響制作等が含まれるものであること。


・専ら他人の具体的指示に基づく裁量権のないプログラミング等を行う者または創作されたソフトウェアに基づき単にCD-ROM等の製品の製造を行う者は含まれないものであること。



⑩ 有価証券市場における相場等の動向または有価証券の価値等の分析、評価またはこれに基づく投資に関する助言の業務


・いわゆる証券アナリストの業務をいうものであること。


・「有価証券市場における相場等の動向」とは、株式相場、債券相場の動向のほかこれに影響を与える経済等の動向をいうものであること。


・「有価証券の価値等」とは、有価証券に投資することによって将来得られる利益である値上がり益、利子、配当等の経済的価値および有価証券の価値の基盤となる企業の事業活動をいうものであること。


・「分析、評価またはこれに基づく投資に関する助言の業務」とは、有価証券等に関する高度の専門知識と分析技術を応用して分析し、当該分析の結果を踏まえて評価を行い、これら自らの分析または評価結果に基づいて運用担当者等に対し有価証券の投資に関する助言を行う業務をいうものであること。


・ポートフォリオを構築または管理する業務、一定の時間を設定して行う相談業務、専ら分析のためのデータの入力・整理を行う業務は含まれないものであること。


⑪ 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務


⑫ 学校教育法に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)


⑬ 公認会計士の業務


⑭ 弁護士の業務


⑮ 建築士(一級建築士、二級建築士および木造建築士)の業務


⑯ 不動産鑑定士の業務


⑰ 弁理士の業務


⑱ 税理士の業務


⑲ 中小企業診断士の業務


 制度の導入にあたっては、事業場の過半数労働組合(ないときは過半数代表者)との労使協定を締結のうえ、様式第13号により、所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です(労働時間等設定改善委員会が設置されている事業場においては、その委員の5分の4以上の多数による議決による決議によって、労使協定に代えることができ、その場合、届出は免除されます)。



5.実務に役立つQ&A

いじめの労災認定は ~同僚間でパワハラなし~

  同僚からいじめを受けていると相談を受けました。上司等からのパワハラは労災認定の対象になると思いますが、同僚の場合、どうなのでしょうか。会社として、対応する義務があるのでしょうか。


 問題の言動を行ったのが、同僚や部下であっても、業務上必要な知識や豊富な経験等を有している者であれば、「優越的な関係を背景とした」言動としてパワハラになり得ます(令2・1・15厚労省告示5号)。


 また、パワハラに当たらなくても、同僚等からのひどいいじめ、嫌がらせは、従前から労災認定の対象とされています。


 業務上の疾病というためには、業務による「強い」心理的負荷があることが要件です。従来、「強」と認定されるには、ひどいいじめ等が執拗に行われたことなどが条件とされていました。


 しかし、令和2年6月1日以降の認定基準(令2・5・29基発0529第1号)では、心理的負荷が「中」程度のいじめ・嫌がらせが「反復・継続していない」場合でも、会社が相談に適切な対応をしないときには、「強」に修正して労災認定するとしています。


 会社として、相談を受けたのに、そのまま放置しておくのは賢明といえないでしょう。



6.助成金情報 ~働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)~

 2020年度から残業時間の上限規制が中小企業にも適用されるなど、働き方改革が推進される中、労働時間の短縮が求められています。

 この助成金は、中小企業事業主が、外部専門家のコンサルティングや労務管理用ソフトウェア、機器の導入などの取り組みを行うことで、労働時間短縮について一定の成果をあげた場合に、その費用の一部を助成するものです。


対象事業主

・労働者災害補償保険の適用を受ける中小企業事業主
・年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則を整備していること
・交付申請(成果目標設定時の申請)時に、成果目標ごとに定められた要件を満たしていること


成果目標

下記①~③のうちいずれか一つ以上を、達成したい目標として選択


① すべての対象事業場において、月60時間を超える36協定の時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、または月60時間を超え月80時間以下に上限を設定すること(すべての対象事業場において変更後の36協定の届出までが必要)


② 病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、その他特に配慮が必要な労働者のための休暇など交付要綱に規定する特別休暇のうちいずれか一つ以上を、すべての対象事業場に新たに導入すること(10人以上の事業場においては就業規則の変更、届出までが必要)


③ 時間単位の年次有給休暇を、すべての対象事業場に新たに導入させること(10人以上の事業場においては就業規則の変更、届出、労使協定の作成等までが必要)


※上記に加えて、指定する労働者の時間当たり賃金額を3%以上または5%以上引上げることを成果目標とし達成することで、助成額の加算を受けることができます。


支給対象となる取組

下記のうちいずれか一つ以上を実施
1 労務管理担当者に対する研修
2 労働者に対する研修、周知、啓発
3 外部専門家によるコンサルティング
4 就業規則・労使協定等の作成・変更
5 人材確保に向けた取組
6 労務管理用ソフトウェアなどの導入・更新
7 労務管理用機器などの導入・更新
8 デジタル式運行記録計などの導入・更新
9 労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新


令和3年度の申請の流れと締め切り

交付申請書を最寄りの労働局に提出 ・・・  令和3年11月30日まで


交付決定後、提出した実施計画に沿って取り組み実施 ・・・ 令和4年1月31日まで


労働局に支給申請 ・・・  令和4年2月10日まで


支給額

成果目標①の上限額


成果目標②の上限額  50万円


成果目標③の上限額  50万円


賃金引上げ達成時の加算額



7.今月の実務チェックポイント  ~育児・介護休業法の改正について~

 今回は、現時点(令和3年6月30日現在)で予定されている育児・介護休業法の改正についてポイントを確認したいと思います。


改正の趣旨

 出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするため、子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備および労働者に対する個別の周知・意向確認の義務付け等の措置を講ずることを目的としています。


男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組み(出生時育児休業)の創設

 子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる育児休業(出生時育児休業)を創設し、柔軟な取得ができるよう目指します。この育児休業については、次のような取扱いが定められています。


① 休業の申出期限については、原則として休業開始の2週間前まで可能とする(ただし、今回の改正で義務付けられる雇用環境の整備等の内容を上回る取組の実施を労使協定で定めている場合は、1カ月前までとすることができます)。
② 分割して取得できる回数は2回までとする。
③ 労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主の個別合意により、合意の範囲内で休業中に就業することが可能。


 ※公布後1年6カ月以内の政令で定める日に施行されます。


事業主への義務付け

① 育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置を講ずること。
② 本人または配偶者の妊娠・出産の申出をした労働者に対して個別の制度周知および休業の取得意向の確認のための措置を講ずること。
③ 育児休業等の取得の状況を公表すること(ただし、常時雇用する労働者が1,000人超の事業主のみ)。
※①および②については令和4年4月1日、③については令和5年4月1日施行。


育児休業の分割取得

 現行制度の下では原則分割することのできない育児休業を、出生時育児休業とは別に2回まで分割して取得可能とする。 ※公布後1年6カ月以内の政令で定める日に施行されます。


有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

 無期雇用労働者と同様の取扱いとし、現行制度の取得要件である「引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件を廃止します。ただし、無期雇用労働者と同様に、労使協定の締結により、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することは可能です。 ※令和4年4月1日施行。


その他

① 詳細は追って省令等で定められますので、そちらもご確認をお願い致します。
② 上記の改正を踏まえて、育児休業給付(雇用保険法)についても規定が整備されます。


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