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メールマガジン2021年10月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2021年10月 Vol.153

1.人事・総務ニュース

雇調金特例が切り札に ~失業率2.6ポイント押下げ~
 

 厚労省が公表した「労働経済白書」によると、雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金が完全失業率抑制に果たした効果は2.6ポイント程度だったことが明らかになりました。同白書には、「新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響」という副題が付されています。


 分析対象は2020年4~10月の7カ月間です。2020年10月時点における実際の失業率は単月で3.1%、月平均2.9%に達していました。

 

 雇用調整助成金の対象労働者が支給を受けなければ全て失業したと想定して試算すると、雇調金の抑制効果は2.1ポイント、緊急雇用安定助成金が0.5ポイント程度と見込まれます。こうした特例措置がなければ、失業率は5%を大きく超えていた可能性があります。


 一方、新型コロナの影響でテレワークが急速に普及しましたが、白書では、オフィスワークに比べて生産・効率性などでやや劣ると評価しています。


 テレワークを中止した企業については、テレワーク中の連絡調整や就業環境に問題があったケースが多く、労務管理上の工夫が必要と指摘しています。



労働条件低下を拒否 ~雇止めもやむなし~
 

 受験予備校の講師が雇止めを不服とした裁判で、東京地方裁判所は、契約の不成立に合理性があるとして、請求を棄却しました。

 

 講師は23年間にわたって契約更新を続けていましたが、「次年度の授業数を減らし、賃金も引き下げる」という条件提示を受けました。従来と同じ内容での更新を求めたところ、拒否されたため、最終的に新契約は成立しませんでした。

 

 判決文では「低下した契約条件提示に労働者が合意しないことを理由に更新拒絶する場合、新条件の客観的合理性・社会的相当性を検討すべき」と判示しました。

 

 「予備校教師という性質上、授業アンケート結果によりコマ数減となる可能性は認識していたはず」と指摘したうえで、アンケート結果は毎年最下位近辺で、無断の文書配布で懲戒を受けた点も踏まえ、条件引下げには合理性があり、雇止めは有効と結論付けました。



ジョブ型インターンの試行へ ~産学90団体が協議会設立~

 大学院生のジョブ型研究インターンシップの普及に向け、先行・試行的取組に参加する45社、45大学が推進協議会を設立しました。

 

 同インターンシップは、大学院生を有期雇用契約で受け入れ、終了後は勤務ぶりを評価し、直接雇用に結び付ける仕組みで、文部科学省が導入を進めています。

 

 対象となる理工農系の博士課程学生にとっては、正規の教育課程として民間企業の業務にタッチする機会を得られます。


 今後、日本でもジョブ型雇用(職務内容に応じて必要な経験・スキルを持つ人材を雇用する制度)が拡大すると予想され、将来的には修士課程学生への適用も視野に入れられています。



2.職場でありがちなトラブル事情

取引先を失ったと解雇 ~セクハラへの対処求めただけ~

 警備会社A社で雇用されたBさんは、C社に派遣され、働いていました。3カ月ほど経過したある日、懇親会に出席した際、酔っぱらったC社の社員に抱き着かれるという事件が起きました。

 

 C社の人事担当者に相談した結果、「行為者の処分を条件に、事件を口外しない」旨の念書を交わし、問題は決着したかに思えました。

 

 ところが、その後、A社から期間途中の解雇を言い渡されました。後から聞いた話では、A社はC社との取引を打ち切られたということです。

 

 Bさんは被害者であるのに、首を切られるのは納得がいかないので、都道府県労働局長の助言・指導を求めました。

従業員の言い分

 セクハラの件については、こちらで蒸し返すつもりはなく、できるだけ「穏便」に済ませたつもりでした。雇用元・派遣先から感謝されるなら分かりますが、最後に待っていたのが、まさか「解雇」とは・・・。

 

 ほかに思い当たる理由はなく、セクハラの苦情が引き金としか考えられません。不当な処分なので、復職を要求します。


事業主の言い分

 既にC社との間で念書を交わし、セクハラ問題は解決したと理解しています。解雇処分としたのは、C社が当社との契約を終結し、新たな派遣先がないためです。

 

 有力な取引先を失ったのはBさんの言動にも原因があるので、新たな話し合いに応じる余地はありません。


指導・助言の内容

 セクハラの被害者として派遣元・先に対処を求めただけであり、取引先の契約解消のキッカケになったとしても、解雇の合理的な理由にならない旨を会社側に説明しました。


 そのうえで、両者に話し合いを促し、Bさんが復職の意思を失ったのであれば、金銭的な解決を図るように助言しました。


結果

 A社が解雇予告手当・慰謝料・治療費(急性神経性胃炎)を合わせ、45万円を支払うことで、和解が成立しました。



3.厚生労働省「令和2年度・雇用均等基本調査」

 男性の育休取得を促進する「改正育介法」は、令和4年4月1日から段階的に施行されます。現在の取得状況は、どうなっているのでしょうか。

 

 厚労省の「雇用均等基本調査」によると、令和2年度、男性の取得率は前年度比5.17ポイント上昇し、12.65%に跳ね上がりました。グラフ(図表1)をみると、その急上昇ぶりには目を見張ります。


 しかし、女性の取得率は平成19年以来、80%台以上を維持しています。調査の名称のとおり、男性の取得率が女性と「均等」になるまで、まだまだ道は遠いようです。




 改正育介法のうち、令和4年4月から施行されるのは、「有期雇用労働者の取得要件緩和」と「職場環境の整備・本人の取得意向確認の義務付け」に関する部分です。前者については、「入社1年未満」の有期雇用労働者も、育休の申出が可能となります。


 パートなどの有期契約労働者の場合、令和2年度の時点で、女性62.5%、男性11.81%が休業を取得しています。正社員・非正規社員の「均衡処遇」の観点からは、この数字も、もう一歩の改善が望まれるところでしょう。





4.身近な労働法の解説 ~労働時間等に関する規定の適用除外①~

 労基法上の労働者について、管理監督者など労働時間等に関する規定を適用しない場合があります。今回は、労働時間等に関する規定の適用除外となる労基法41条について解説します。


1.労働時間等に関する規定の適用除外(労基法41条)

 次の①〜③の事業または業務に従事する労働者については、その性質または態様が法定労働時間や週休制を適用するに適しないことから、労基法上の労働時間、休憩および休日に関する規定は適用されません。


 ① 農業(林業を除く)または畜産、養蚕、水産の事業に従事する者
この種の事業がその性質上天候等の自然的条件に左右されるため、法定労働時間および週休制になじまないものとして適用除外とされています。

 ② 事業の種類にかかわらず監督もしくは管理の地位にある者または機密の事務を取り扱う者
これらの者は事業経営の管理者的立場にある者またはこれと一体をなす者であり、労働時間、休憩、休日に関する規定の規制を超えて活動しなければならない企業経営上の必要から適用除外とされています。

 ③ 監視または断続的労働に従事する者(要労基署長の許可)
通常の労働者と比較して労働密度が疎であり、労働時間、休憩、休日の規定を適用しなくても必ずしも労働者保護に欠けるところがないとされ適用除外とされています。



2.適用除外となる労基法の規定

 適用除外となるのは、労働時間、休憩および休日に関する規定です。 具体的には、法定労働時間(32条)、労働時間の特例(40条)、休憩時間(34条)、休日(35条)、時間外・休日労働の割増賃金に関する部分(33条、36条、37条)、妊産婦の労働時間(66条)等です。 なお、年少者および妊産婦の深夜業禁止(61条、66条3項)、割増賃金の深夜業に対する部分(37条)、年次有給休暇(39条)は、適用除外とされていません。



3.適用除外(上記1①〜③)についての解説

(1)「①農業(林業を除く)または畜産、養蚕、水産の事業に従事する者」について

・「農業」が主たる事業であっても、農産物の加工やその加工品の販売など、実態によっては適用除外には該当しません。


(2)「②監督もしくは管理の地位にある者または機密の事務を取り扱う者」について

・「監督もしくは管理の地位にある者」とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断されます。
・「機密の事務を取り扱う者」とは、秘書その他職務が経営者または監督もしくは管理の地位にある者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理になじまない者をいいます。


(3)「③監視または断続的労働に従事する者」について

・「監視に従事する者」は、原則として、一定部署にあって監視するのを本来の業務とし、常態として身体または精神的緊張の少ないもの(守衛や門番等)をいいます。 なお、所轄労基署長が許可しないものとしては、「交通関係の監視、車両誘導を行う駐車場等の監視等精神的緊張の高い業務」「プラント等における計器類を常態として監視する業務」「危険又は有害な場所における業務」等があります。
・「断続的労働」とは、作業自体が本来間歇(かんけつ)的に行われるもので、したがって、作業時間が長く継続することなく中断し、しばらくして再び同じような態様の作業が行われ、また中断するというように繰り返されるもの(寄宿舎の管理人等)をいいます。
・断続的労働の一態様として「宿直又は日直の勤務で断続的な業務」があり、所轄労基署長の許可を受けた場合は、労働時間(32条)の規定にかかわらず労働者を使用することができます。



5.実務に役立つQ&A

一時金受給できるか ~喪失後半年過ぎて出産~

 妊娠4カ月目の従業員が退職します。健保の資格喪失後、半年以内に出産すれば出産育児一時金が支給されますが、予定日がギリギリで、仮に出産日が半年を過ぎるとどうなりますか。


 健保法106条では、被保険者資格を喪失した後も、①資格喪失前に1年以上被保険者期間があり、②資格喪失日後6月以内に出産したときは、被保険者として受けられるはずだった出産育児一時金を支給するとしています。


 ①の期間算定に際しては、任意継続被保険者の期間は含めません。また、資格を喪失した本人が対象なので、家族など被扶養者が出産しても支給されません。


 資格喪失後6月と要件を定めているため、実際の出産日が予定日より遅れて超過した際には受給できません。


 ただし、退職後、夫が健保の被保険者で、その被扶養者となっている場合には、家族出産育児一時金が支給されます。国保の被保険者となったケースでも、出産育児一時金は相対的必要給付とされていることから、条例等に基づき、支給される可能性があります。




6.助成金情報 ~キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)~

 令和3年度新設(障害者雇用安定助成金からの移管)の助成金です。障害のある有期雇用労働者等を正規雇用または無期雇用に転換した事業主に支給されます。


助成金の概要

 障害者の雇用促進と職場定着を図るために、次のふたつのうちいずれかの措置を、継続的に講じた事業主に支給されます。
A:有期雇用労働者を正規雇用労働者(多様な正社員を含む)または無期雇用労働者に転換する
B:無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換する


対象となる労働者

・申請事業主に通算6カ月以上雇用されている有期雇用労働者または無期雇用労働者
・転換を行った時点で次のいずれかに該当する労働者
① 身体障害者
② 知的障害者
③ 精神障害者
④ 発達障害者
⑤ 難病患者
⑥ 高次脳機能障害と診断された者 ・就労継続支援A型事業における利用者でない
・雇入れ時点において正規雇用または無期雇用への転換が予定されていない


対象となる事業主

・雇用保険適用事業主
・雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いている
・対象労働者に対してキャリアアップ計画を作成し管轄労働局長の認定を受けている
・キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んでいる


対象となる転換の要件

・対象労働者を、支給対象期の初日から6カ月以上継続雇用し支給対象期分の賃金を支給した
・転換した日以降、対象労働者を雇用保険被保険者として適用させている
・転換する際に労働者の同意を得ている
・転換後6カ月間の賃金を転換前6カ月間の賃金より減額させていない(変動賃金を除く)


申請の流れ

支給額



7.今月の実務チェックポイント  ~育児休業期間中の社会保険料の免除について~

 今回は、2022年10月1日から施行される健康保険法の改正にかかる育児休業期間中の保険料の免除について確認します。厚生年金保険法についても、健康保険法に準じて改正が行われます。


現行制度

 まず、現行制度を確認します。現行制度においては、育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等(育児休業および育児休業に準ずる休業)期間について、被保険者は、事業主へ申出を行い、事業主が「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構(健康保険組合加入の会社は健康保険組合も含む)へ提出した場合は、被保険者・事業主負担分とも健康保険・厚生年金保険の保険料(社会保険料)の納付が免除されます。この手続きにより保険料の納付が免除される期間は、育児休業等開始月から終了予定日の翌日の属する月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までとなります。現行制度はこのような内容になっています。


現行制度の問題点

 現行制度の場合、例え月末の1日のみ育児休業を取得した場合でも、その月の社会保険料は免除になります。さらに、その月が賞与支給月である場合は、賞与にかかる社会保険料も免除されることになります。しかし、育児休業を月末ではなく月の初日以降に取得し、月の途中に終了した場合は、それが例え10月1日~10月30日の期間に取得した場合であっても社会保険料は免除されないことになります。このため、育児休業取得者の経済的負担に配慮して設けられた制度であるにもかかわらず、特に短期間で育休を取得する男性で不公平が生じていることが問題となっています。また、社会保険料の免除のために賞与支給月に育児休業の取得が集中する傾向があるなどの問題も生じています。


改正内容

 上記の問題を解決するために育児休業期間中の社会保険料免除について次のとおり改正されます。


 ①育児休業期間中の社会保険料免除は、育児休業等開始月から終了予定日の翌日の属する月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までの期間に加えて、月の途中で育児休業を終了した場合は、その月に14日以上育児休業を取得していれば、その月についても適用されます。


 ②賞与にかかる社会保険料免除対象者は、1カ月超の育児休業取得者に限られます。


 したがって、2022年10月1日の施行日以後、育児休業期間にかかる月次の社会保険料の免除対象者あるいは賞与の社会保険料免除対象者が変更となりますので、実務で対応できるよう準備が必要です。




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